配偶者との死別。
それは往々にして突然やってきます。
残された者は悲しむ暇もないままに、葬式の準備や各種手続きに忙殺され、心身ともに疲労してしまいます。
それが外国人であったら尚さらのことです。
本記事では、不幸にも日本人と死別してしまった配偶者ビザを有する外国人の方へ、
死別後の対応やその後のビザについて、ビザ申請専門家の観点から詳しく解説していきます。
<この記事が参考になる人>
・日本人の配偶者と死別してしまった外国人
・万が一の時のことを知っておきたい人
・配偶者ビザについて詳しく知りたい人
目次
配偶者ビザを有する外国人が日本人配偶者と死別したら
日本人の配偶者と死別してしまった場合、ビザ関連の手続きで言うと以下のような流れになります。
①配偶者の死亡
↓
②配偶者が死亡した日から14日以内に管轄の地方出入国在留管理局へ「配偶者に関する届出」を行う
↓
③帰国 or 死別した日から6か月以内に在留資格変更申請を行う
以下でそれぞれ解説していきます。
配偶者が死亡した日から14日以内に届出を行う
日本人配偶者が亡くなってしまった場合、14日以内に管轄の地方出入国在留管理局へ「配偶者に関する届出」を行わなければありません。(入管法第19条の16第3号)
管轄の窓口は以下のリンクから確認できます。
この届出を14日以内に行わない場合、20万円以下の罰金に処される恐れがありますので注意が必要です。(入管法第71条の5第3号)
また、たとえ罰金に処されなかったとしても、期限内に届出を行わないことは次の変更申請の際にマイナス要因としてカウントされてしまいます。
配偶者の方が亡くなってしまい、その他にも色々とやらなければならないことが山積してる中、
14日以内に届出を行わなければないことは、残された外国人の方にとって大きな負担なことと思います。
しかし、多少なりとも今後の審査に影響があると考えると、ここは大変ですが期限内に手続きを行うようにしましょう。
届出に関する書類は以下のリンクからダウンロード可能です。
配偶者が死亡した日から6か月以内に在留資格変更申請を行う
ここからは帰国をせず、引き続き日本に在留するケースをみていきましょう。
入管で配偶者に関する届出を済ませたら、配偶者が死亡した日から6か月以内に在留資格変更申請を行います。
死別から6か月を超えているのにも関わらず、変更・更新申請を行わないで今のまま在留資格でいる場合、在留資格を取り消されることがあります。
在留資格取消制度
在留資格に対応する活動を一定期間行っていないことが判明した場合、法務大臣は在留資格を取り消すことができます。(入管法第2の4第1項各号)
日本人の配偶者の場合は、6月以上その活動を行わない場合はその対象となるとされています。(入管法第2の4第1項第8号)
詳しくは以下の記事をどうぞ。
配偶者と死別後、引き続き日本に在留する方法
配偶者と死別した後も引き続き日本に在留する方法は、配偶者ビザから他の在留資格へ変更申請を行うことです。
以下、考えられる変更申請の一例です。
●就労ビザへ変更
●留学ビザへ変更
●定住者ビザへ変更(可能であれば推奨)
●家族滞在ビザへ変更(離婚後日本にいる外国人と結婚した場合)
●配偶者ビザを更新(離婚後別の日本人と結婚した場合)
それぞれ詳しく解説していきます。
就労ビザへ変更
配偶者ビザから、「技術・人文知識・国際業務」に代表される就労ビザへ変更するのが一つの方法です。
しかし、そのような就労系資格への変更は無条件にできるものではありません。
学歴、職歴、勤務先の職種など、一定の要件を満たさなければ変更することはできません。
したがって、就労ビザへのハードルは少々高いかもしれません。
留学ビザへ変更
就労ビザが難しい場合、留学ビザも考えられます。
留学ビザの場合は基本的に就労活動することはできませんが、資格外活動許可を取れば一定時間は働くことが可能です。
また、卒業後は就職して就労ビザを取得できる可能性もあります。
なお、留学ビザを申請する場合は
・学費を工面すること
・留学期間中の生活費を賄える資産を有していること
など、ビザを取得する為には一定の要件をクリアする必要があります。
定住者ビザへ変更(可能であれば推奨)
要件を満たしている場合、「定住者」への変更申請を行うことができます。
定住者は、日本人の配偶者等と同じく、無制限で就労することができます。
また定住者は、永住権を申請する際も居住要件が緩和される等、就労ビザや留学ビザにはないメリットがあります。
定住者への変更については、以下に一つの章を設けて解説していきます。
家族滞在ビザへ変更(死別後日本に在留する外国人と結婚した場合)
前配偶者と死別した後、日本に在留資格を持って在留している外国人と再婚した場合、家族滞在ビザへの変更申請を行うことになります。
なお、家族滞在ビザは配偶者ビザと異なり、就労活動を行うことはできません。
働いて少しでも収入を得たい場合、資格外活動許可を取得する必要があります。
配偶者ビザを更新(死別後別の日本人と結婚した場合)
前配偶者と死別した後、新たに日本人と結婚することになった場合、そのまま配偶者ビザの更新申請を行うことになります。
しかし、更新申請とはいえど、配偶者が変わるので実質新規申請(認定・変更申請)と同じ要領で審査されることになります。
死別後に配偶者ビザから定住者ビザへ変更する
「定住者」は就労の制限が無く、永住権の居住年数要件も緩和されており、変更のメリットは多いです。
したがって、日本人と死別した外国人は、まず定住者ビザへ変更する事は可能か検討します。
定住者ビザへの変更申請が認められるためには、以下のすべての要件に該当している必要があります。
①約3年以上正常な婚姻関係が継続していたことが認められること
②安定した収入や生計を維持できる資産があること
③日常生活に不自由しない程度の日本語能力があること
④公的義務を履行していること
この要件のほかにも、前配偶者との間に子供がおり、その子の養育者になる場合は定住者ビザは認められやすいです。
①約3年以上正常な婚姻関係が継続していたことが認められること
おおむね3年以上婚姻関係が継続していたらこの要件に該当します。
なお、「3年以上の正常な」婚姻関係が継続している必要がありますので、婚姻中も長い間別居している等の事実があると不許可のリスクが高まります。
また、付与されていた配偶者ビザの在留期間が「3年」もしくは「5年」である必要は無く、「1年」の在留期間でも許可の可能性があります。
②安定した収入や生計を維持できる資産があること
安定した収入といっても、具体的な金額が決まっているわけではありませんが、生計を維持すると考えると年収200万円以上はあった方が良いでしょう。
死別をした時点で無職であったり、不安定な職に就いている場合は速やかに就職活動をしましょう。
正規雇用されたうえで安定収入を得るのが定住者ビザ取得には欠かせません。
③日常生活に不自由しない程度の日本語能力があること
ここで必要とされる日本語能力は、通常の社会生活が支障なく送れる程度でOKです。
例えば、定住者ビザの申請書の記載や面接において、意思の疎通が可能である程度で良いでしょう。
特定の日本語能力試験に合格している必要はありません。
④公的義務を履行していること
公的義務とは、例えば離婚した際に「配偶者に関する届出」を14日以内に行っているかどうかという事です。
離婚後14日以内に届出を行わなかったからと言って、すぐに罰則が適用されるという事はありません。
しかし、定住者ビザの審査では公的義務をちゃんと履行していないとしてマイナス評価を受けてしまう恐れがあります。
定住者ビザの変更申請のポイント
如何に自分が定住者の要件に該当するかという事を書面で立証できるかが、定住者ビザへの変更申請のポイントとなります。
定住者ビザへの申請の際、審査を有利に運ぶためにも、申請書等の必要書類に加えて以下の書類を積極的に提出することをオススメします。
●申請理由書
●遺族年金や相続した資産等が証明できる資料
申請理由書
申請理由書では、
●前配偶者と結婚してから死別するまでの生活
●なぜ今後も日本で生活していきたいのか
●今後どのように生計を立てて日本で生活をしていくのか
など出来るだけ具体的に詳細を記載し、自分が定住者ビザを付与されるにふさわしい人物であることをアピールしていきます。
遺族年金や相続した資産を証明できる書類
前配偶者が亡くなることによって発生した遺族年金や、相続することになった資産等がある場合はそれを証明できる資料を提出しましょう。
定住者ビザの審査を有利にする要件の一つは「安定した収入や生計を維持できる資産があること」です。
したがって、出来るだけ審査を有利に運ぶためにも、プラス要因となる書類は積極的に提出していきます。
配偶者と死別して路頭に迷わないためにも、配偶者ビザを取得した時点で永住権の検討を
配偶者ビザは就労の制限もなく、他の在留資格と比べて優遇されています。
しかし一方で、定期的に更新の必要があったり、死別をした場合に資格を失ってしまうなど、外国人の方にとっては不安定な在留資格であることには変わりません。
そこで、配偶者ビザを有している外国人の方には、婚姻中にできるだけ永住権の検討をオススメします。
永住権を取得する事が出来れば、在留資格の定期的な更新は必要なくなり、突然の配偶者の死といった不幸に見舞われた場合も在留資格を失うことなく日本に滞在できます。
永住権の要件はここでは割愛しますが、
配偶者ビザで日本に滞在を始めた時点から将来の永住権への変更を意識して生活することで、その後の許可の可能性が大幅に高まります。
人の生死は誰もコントロールできる問題ではありません。
その様な極めて不確実な事象に自らの運命を委ねないためにも、リスクヘッジの一つとして、配偶者ビザを取得した時点から永住権を検討してみるのはアリだと思います。
まとめ
本記事では、配偶者ビザを持っている外国人の方が配偶者と死別してしまった場合について解説してきましたが、参考になりましたでしょうか。
人の死は誰もが予期しない時に起こるものです。
突然の不幸に悲しむ暇もなく、死後の事務に追われ、更には在留資格についても懸念しなくてはならない外国人の方は苦労が絶えないと思います。
ビザ関係の手続きに困ったら、放っておかず、ビザ申請の専門家にご相談ください。