永住許可申請では理由書の提出が必要ですが、これには多くの人が頭を痛めています。
なぜなら、理由書は自由書式だから。
理由書は審査においても重要な書類なので、「自由に書いていいよ」と言われても困りますよね。
そこで今回は、ビザ申請の専門家である行政書士が申請理由書の書き方のポイントから例文まで、徹底的に解説します!
・申請理由書の概要
・申請理由書の書き方
・申請理由書を書く際の注意点
目次
永住許可の理由書とは
理由書とは、永住許可申請を行う上で添付が必須になってくる書類です。
理由書の名の通り、「なぜ日本の永住許可が必要なのかを出入国在留管理庁に説明するためのもの」です。
申請理由書の提出が必要な人は?
入管はすべての申請者に理由書の提出を義務付けているわけではありません。
永住申請にあたり理由書が必要なのは、以下の在留資格を持っている人です。
・定住者
・高度人材外国人(高度専門職または特定活動)
・就労系在留資格(技術・人文知識・国際業務、技能、家族滞在)
在留資格の中でも、「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の在留資格を持っている人の理由書の提出は任意です。
しかしケースによっては上記の人でも理由書を求められることがありますので、筆者はすべての人に理由書の提出をオススメします。
理由書作成のポイント
理由書は自由書式です。
だからといって、適当に書いただけでは審査においてマイナスになり兼ねません。
理由書を作成に当たっては、簡単なポイントを抑えていると書きやすいです。
構成
理由書を作成する際は、以下の構成で書いていきます。
①自己紹介
②来日してから現在までの経緯
③仕事の状況
④生活の状況
⑤申請理由・今後について
ポイント
「自分が永住許可の要件を満たしていること」を必ず理由書の内容に盛り込みましょう。
具体的には以下の項目をいれます。
・居住年数、就労年数を満たしていること
・収入が十分にあること
・健康保険や年金は期限通りに支払っていること
・身元保証人とのこと
永住許可の要件については以下の記事で解説しています。
構成とポイントを意識しながら、永住理由書を書いてみる
上で説明した構成とポイントを意識しながら、順を追って理由書を書いてみましょう。
この理由書の登場人物のプロフィールを紹介します。
名前:ビザゴリ男
国籍:アメリカ
学歴:ビザ部大学卒業
在留資格:技術・人文知識・国際業務
来日:2010年3月
勤務先:株式会社TAKAO
①自己紹介
自己紹介といっても、国籍と名前だけでOKです。
理由書の導入部分になります。
(例)
私は、アメリカ国籍のビザゴリ男と申します。このたび「永住者」の在留資格を申請するにあたり、以下の通り申請理由について説明させていただきます。
②来日してから現在までの経緯
いつ日本に来て、現在まで何をしていたのかを簡単に説明します。
ポイントは赤字で示しています。
(例)
私はアメリカのカリフォルニア州で生まれ、本国の高校を卒業した後、2010年3月1日に来日しました。
同年4月にビザ部大学に入学し、経営を学びました。2014年3月に大学を卒業し、学士の学位を取得しました。
卒業後は株式会社ビザ部に就職し、2017年4月に株式会社TAKAOに転職、現在に至るまで勤務しています。
(来日の日付や大学入学、就職の年月を記載)
大学卒業後「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得して、働きはじめてからは約8年になります。
(就労年数が5年以上経過してことについて)
就労ビザから永住申請をする場合、就労系の在留資格を取得してから5年以上就労経験が必要となります。
③仕事の状況
現在の仕事内容や、仕事へのやりがいなどを書いていきます。
実際の職場では人間関係の軋轢やトラブルはつきものですが、理由書にはポジティブなことを書いた方が良いです。
(例)
私は現在、株式会社TAKAOのコンサルタントマネージャーとして勤務しております。
同社は、主に中小企業にむけて法務の視点から経営戦略の実現をサポートしており、私は同社コンサルタントメンバーの育成、マネジメントを担当しております。(仕事内容の詳細)
同社ではこれまでのキャリアを生かして伸び伸びと働くことができており、同僚や上司との関係も良好で、毎日楽しく非常にやりがいを感じております。(仕事へのやりがい)
今後も同社を発展させていけるよう、より一層努力していく所存でございます。
将来、私の語学力そして今まで積んだキャリアを活かせる機会があれば、日本企業、ひいては日本経済に少しでも貢献できればと考えております。
④生活の状況
現在の日本での生活状況を記入します。
特にこの章で、来日してからの年数や現在の年収、公金の支払いについてなど、永住の要件を満たしていることについて触れていきます。
(例)
私は縁あって2010年4月から日本の大学に入学し、渡日してから約12年と2か月となりました。(居住年数について)
現在の会社に転職してから給与も上がり、現在の年収は約600万円程ありますので、日本で生活していくうえで経済的な心配もなく、安定した生活を送っております。(年収について)
また、会社で社会保険も加入しているため、健康保険・厚生年金共に給与から差し引かれており、就職してから約8年間にわたり納税義務を怠ったことはございません。(健康保険、納税義務について)
今回身元保証人になっていただいたビザゴリ吉さんは私の同僚になります。ビザゴリ吉さんにはいつも仕事面からプライベートでもお世話になっており、休みの日にも飲みに出かけるような間柄です。私が現在日本で充実した生活を送れるのは、ビザゴリ吉さんのおかげと言えます。(身元保証人について)
⑤申請理由・今後について
理由書の最後に、永住許可の申請理由と日本での生活の今後の展望について記入します。
ここではあなたの素直な気持ちを綴っていくのが一番です。
しかし、そうはいっても何を書いてよいかわからないという方は以下の例を参考にしてください。
(例)
私は今後も日本で暮らしていきたいと強く思っています。
私が約12年間の日本生活のなかで様々な困難に直面した時、日本人の方にとても親切にサポートしてもらいました。
今の私があるのは、日本社会と日本人の方々の温かい支えがあったからにほかなりません。
この素晴らしい国日本で勤勉に働き、日本社会と日本の方々に恩返しがしたい。これが永住申請の最大の理由です。(永住申請の理由)
今後は永住者として日本に住み続け、より日本社会に順応し、今度は私が日本社会に貢献できるよう一層努力して参る所存です。
母国にいる私の親や兄弟も、私が今後日本に暮らすことに賛成してくれています。
現在、私の生活の基盤は日本にあり、今後も日本国の住民として法律を守り、引続き誠実に暮らして参ります。(今後について)
上記のような理由で、「永住者」の在留資格を申請させていただきました。許可いただけますよう、何卒よろしくお願いいたします。
理由書の完成形
さて、ここで今までそれぞれの章に分けて紹介してきた文章を繋げて、一つの完成した申請理由書をお見せしましょう。
これから理由書を作成する人は是非参考にしてみてください。
法務大臣 殿
令和〇年〇月〇日
申請人 ビザゴリ男
永住理由書
私は、アメリカ国籍のビザゴリ男と申します。このたび「永住者」の在留資格を申請するにあたり、以下の通り申請理由について説明させていただきます。
■来日してから現在までの経緯について
私はアメリカのカリフォルニア州で生まれ、本国の高校を卒業した後、2010年3月1日に来日しました。同年4月にビザ部大学に入学し、経営を学びました。2014年3月に大学を卒業し、学士の学位を取得しました。卒業後は株式会社ビザ部に就職し、2017年4月に株式会社TAKAOに転職、現在に至るまで勤務しています。大学卒業後「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得して、働きはじめてからは約8年になります。
■仕事の状況について
私は現在、株式会社TAKAOのコンサルタントマネージャーとして勤務しております。同社は、主に中小企業にむけて法務の視点から経営戦略の実現をサポートしており、私は同社コンサルタントメンバーの育成、マネジメントを担当しております。同社ではこれまでのキャリアを生かして伸び伸びと働くことができており、同僚や上司との関係も良好で、毎日楽しく非常にやりがいを感じております。今後も同社を発展させていけるよう、より一層努力していく所存でございます。将来、私の語学力そして今まで積んだキャリアを活かせる機会があれば、日本企業、ひいては日本経済に少しでも貢献できればと考えております。
■生活の状況について
私は縁あって2010年4月から日本の大学に入学し、渡日してから約12年と2か月となりました。現在の会社に転職してから給与も上がり、現在の年収は約600万円程ありますので、日本で生活していくうえで経済的な心配もなく、安定した生活を送っております。また、会社で社会保険も加入しているため、健康保険・厚生年金共に給与から差し引かれており、就職してから約8年間にわたり納税義務を怠ったことはございません。
今回身元保証人になっていただいたビザゴリ吉さんは私の同僚になります。ビザゴリ吉さんにはいつも仕事面からプライベートでもお世話になっており、休みの日にも飲みに出かけるような間柄です。私が現在日本で充実した生活を送れるのは、ビザゴリ吉さんのおかげと言えます。
■申請理由・今後について
私は今後も日本で暮らしていきたいと強く思っています。
私が約12年間の日本生活のなかで様々な困難に直面した時、日本人の方にとても親切にサポートしてもらいました。今の私があるのは、日本社会と日本人の方々の温かい支えがあったからにほかなりません。この素晴らしい国日本で勤勉に働き、日本社会と日本の方々に恩返しがしたい。これが永住申請の最大の理由です。
今後は永住者として日本に住み続け、より日本社会に順応し、今度は私が日本社会に貢献できるよう一層努力して参る所存です。母国にいる私の親や兄弟も、私が今後日本に暮らすことに賛成してくれています。現在、私の生活の基盤は日本にあり、今後も日本国の住民として法律を守り、引続き誠実に暮らして参ります。
上記のような理由で、「永住者」の在留資格を申請させていただきました。許可いただけますよう、何卒よろしくお願いいたします。
理由書を作成する際の注意点
最後に、理由書を作成する際の注意点についてさらっと解説します。
理由書の作成は手書きでもよいか
手書きでOKです。
ただし、手書き長い文章になってくると修正が難しいです。
PCが使える環境にあるのであれば、PCで作成したほうがが楽に仕上げらます。
文字数について
特に指定はないのですが、1000字~2500字程度かければよいと思います。
文字数を気にして冗長になっても仕方ないので、わかりやすく簡潔に書ければよいと思います。
ちなみに、上で紹介した理由書の例で1300字程度です。
言語について
理由書は日本語でも母国語でも問題ありません。
ただし、母国語で作成した場合翻訳が必要となりますので注意です。
理由書の作成のみを行政書士に依頼するのもあり
仕事やプライベートも忙しい中、永住申請の書類を揃え、理由書も作成しなければならないとなると相当な時間や労力がかかります。
そこで、他の書類チェックに加え、理由書の作成のみ行政書士に依頼するというオプションも検討されてはいかかでしょうか。
永住申請すべてを依頼すると手数料はそれなりに高額になってきますが、理由書の作成や書類のチェックだけならば費用は大きく抑えられます。
費用はできるだけ押さえたいけれど、許可率は上げたいという方にはオススメです。
是非、お気軽にご相談ください。