国際結婚をしたのに離婚したい・・・。
国際結婚のキラキラしたイメージとは裏腹に、じつは毎年多くの国際結婚夫婦が破局しています。
友人知人で国際結婚した人のうち、純日本人の2名はいずれも1年ほどで離婚している。色々大変なんですかね。
— 横須賀 (@ykskmmntmr) March 16, 2022
この記事では国際結婚をした夫婦の離婚率や手続きについて、専門家が詳しく解説していきます。
・国際結婚夫婦の離婚率
・国際離婚の手続きについて
・国際離婚にともなう注意点
行政書士 明石隆生
ビザ部を運営する編集長、現役行政書士。 行政書士事務所の代表として日々多く業務をこなしながら、専門家としての知識を活かし、日本のビザに関する様々なお役立ち情報を発信している。ビザ関係の記事はすべて自ら執筆。
目次
国際結婚夫婦の離婚率の高さ
日本人同士の夫婦では、実に3組に1組は離婚するといわれています。実際、2019年に政府から発表された離婚率は約34%です。
しかし、国際結婚の離婚率の高さは日本人のそれと比べても高いです。
下の表をご覧ください。
(2019年) | 婚姻件数 | 離婚件数 | 離婚率 |
日本人の夫婦 | 577,088組 | 197,849組 | 34.28% |
国際結婚の夫婦 | 21,919組 | 10,647組 | 48.57% |
参照:e-Stat
これは直近で確認できる2019年のデータです。
このデータによると、国際結婚夫婦の約半数が離婚していることになります。
2組に1組は破局する・・・この数字だけ見ると国際結婚生活を円満に保っていくことは簡単ではなさそうですね。
国際結婚夫婦の離婚率が高い理由
文化や言葉が同じ日本同士でも3割以上が離婚に陥ってしまう結婚生活ですので、国際結婚の夫婦がそれ以上の離婚率になってしまうのもある意味納得できます。
離婚原因には、性格の不一致、浮気、DVなど、国籍関係なく離婚原因となりえる要因もあるでしょう。
しかし主に国際結婚の離婚率が高い理由としては、
・文化の違い
・言葉の壁
・子育て方針の違い
が挙げられることが多いです。
文化の違い
慣れ親しんだ文化や慣習は、生まれ育った国が違えば当然違ってきます。
日本社会では当たり前の「空気を読む」ことが外国では非常識なように、自らの文化や慣習では当たり前なことが諸外国では当たり前ではありません。
その独自の文化や慣習を相手にも強要するようなことが起きると、国際結婚では摩擦が生じます。
お互いの文化や慣習をリスペクトしたうえで、それぞれ調和をとって生活していくことは、口で言うより難しいようです。
言葉の壁
国際結婚をする夫婦であれば、どちらかの言語や英語などで、お互いにある程度の意思疎通はできているはずです。
しかし多くの人にとって、細かなニュアンスや感情の機微などは母国語以外で伝えることは難しいです。
夫婦間の信頼関係を築く過程で、自分の想いを100%伝えられないことはストレスになります。
言葉の壁が原因ですれ違いが増えることにより、お互いの距離が開いてしまうことは多いです。
子育ての方針
家でどちらの言語を使うか、学校はどんな学校に入れるか、習い事はどうするのか・・・
どの家庭も子どもの教育方針に関する悩みはつきものですが、国際結婚をした夫婦間ではさらに多くの課題があるようです。
国によって教育システムや教育方針も違うため、夫婦間の意見が大きく食い違う場合、それがきっかけとして夫婦間に溝ができてしまうことがあります。
国際結婚夫婦における離婚手続き
国際結婚をした夫婦の離婚手続きについては、「法の適用に関する通則法」によって定められています。
たとえば、夫婦の一方が日本人で日本に住んでいれば、仮に相手が外国に住んでいる場合でも、日本の法律によって離婚手続きを進めることになります。
とはいっても、国際離婚が両方の国で正式に承認されるためには、夫婦の状況や相手国の法律等によって変わるため、相手国の法律や手続きも調べる必要があります。
日本で離婚する場合
日本在住の日本人が外国人と離婚する場合、たとえ相手が国外に去ってしまっている場合でも日本の法律によって離婚が成立します。
この場合、離婚方法やその後の処理については日本の法律に準じます。
協議離婚
両者が離婚に合意している場合は協議離婚となります。
居住地を管轄する役所へ離婚届を提出すれば離婚は成立します。
調停離婚
お互いが離婚に合意せず、協議離婚が成立しない場合は家庭裁判所へ調停を申し立てます。
調停が合意できれば離婚が成立します。
なお、日本では離婚裁判をする前に必ず家庭裁判所で調停を受けなければなりません。
裁判離婚
調停でも合意できず不成立になった場合は、家庭裁判所に離婚の裁判を申し立てます。
離婚裁判はまさしく離婚の最終手段です。
日本の離婚裁判で離婚原因として認められているのは、不倫や配偶者の暴力が多いです。
日本で離婚が成立した場合でも、相手の国にその旨を届け出なければ、その国では法律上夫婦のままです。
日本で離婚をする際は、相手国の在日大使館等でその国の手続き方法を調べる必要があります。
外国で離婚する場合
外国での離婚はその国の法律に準じた手続きをおこないます。
海外では離婚裁判を行うことが多いです。
離婚裁判が成立した場合は、離婚判決の謄本、判決確定証明書とそれぞれの書類の日本語訳文を添付して、在外日本大使館へ離婚届を提出します。
日本側はその届出に対して「外国判決の承認」を行い、離婚届を受理します。
手続や必要書類はそれぞれの国にある日本大使館によっても異なるはずですので、一度問い合わせをするのが確実です。
国際離婚にともなう注意点
国際結婚をした夫婦が離婚する際の注意点を6つ紹介します。これらは知っていて損はないです。
離婚後の姓について
国際結婚は基本的に夫婦別姓のため、特に姓を変更していない場合は問題ありません。
ただし、結婚の際に外国姓に変更する手続きを取っていた場合で、離婚後に元の姓にもどりたい時は、離婚から3月以内に変更届を役所へ提出する必要があります。
国際結婚と苗字(姓)については以下の記事でも詳しく解説しています。
慰謝料について
調停や裁判をした結果、外国人配偶者に離婚原因があると認められ、慰謝料の支払いが命じられたとしても、当人が外国へ帰国してしまうと日本からの慰謝料の請求が難しいといわれています。
ここは泣き寝入りしないように注意が必要です。
財産分与について
日本に住んでいるのであれば、日本の法律によって財産分与が行われます。
対象となる財産には、現金、預金、不動産、株式、生命保険、退職金などがあります。
財産分与についても慰謝料同様、相手が日本を出国してしまうと請求が難しくなります。
親権について
日本では、離婚した夫婦のどちらか一方に子ども親権が渡る単独親権です。
一方、欧米の多くの国では離婚した夫婦の共同親権が認められています。
離婚後の子供の親権については、子どもの国籍がある国の法律に基づきます。
日本であれば、子どもの親権は夫婦で協議を行い、協議で合意に至らなければ調停または裁判で決めることになります。
養育費について
親権者でなくても、親であれば養育費を支払う義務があります。
養育費についてもその他の支払い同様、相手が日本から出国してしまうと請求が難しくなってしまうことがあります。
それらの事態を避けるためにも、事前に一括払いをしてもらったり、支払いが滞った際の対処策を立てておけると良いでしょう。
在留資格について
「日本人の配偶者等」の在留資格(いわゆる配偶者ビザ)を持って日本に在留している外国人は、日本人と離婚した場合、在留資格を変更する必要があります。
この変更をしないで放置している場合、最悪在留資格を取り消され、日本から強制退去(退去強制)になってしまう恐れもあります。
配偶者ビザと離婚について詳しくは以下の記事で解説していますので、日本で日本人パートナーと離婚をされる外国人の方は要チェックです。
まとめ
華やかでキラキラしたものとみられがちな国際結婚ですが、この記事を読んでその離婚率の高さや、日本人同士の離婚以上に手続きの面倒くささを知った人も多いのではないでしょうか。
もちろん結婚生活はうまくいくに越したことがありません。
しかし、どこかのタイミングで結婚生活がきな臭くなってきたとき、この記事が少しでも参考になれば幸いです。