このような質問はよくあります。
今回の記事では、配偶者ビザで日本に在留している外国人が離婚した場合について、ビザ申請専門の行政書士である筆者がわかりやすく解説していきます。
<この記事が参考になる人>
・日本人配偶者と離婚を考えている人
・この度離婚をしたが、手続きに関してイマイチ分からない人
・配偶者ビザ申請について詳しく知りたい人
目次
配偶者ビザを持つ外国人が日本人と離婚したら・・・
まず、離婚をしたとしてもすぐに配偶者ビザが取り消されることはありませんので安心して下さい。
日本人配偶者と離婚をした場合、以下の流れで手続きを行います。
①離婚
↓
②離婚した日から14日以内に管轄の地方出入国在留管理局へ「配偶者に関する届出」を行う
↓
③帰国 or 離婚した日から6か月以内に在留資格変更申請を行う
以下でそれぞれ解説します。
離婚した日から14日以内に届出を行う
日本人配偶者と離婚してからまずしなければならないことは、14日以内に管轄の地方出入国在留管理局へ「配偶者に関する届出」を行うことです。(入管法第19条の16第3号)
管轄は以下のリンクから確認できます。
この届出を14日以内に行わない場合、20万円以下の罰金に処される恐れがありますので注意が必要です。(入管法第71条の5第3号)
また、たとえ罰金に処されなかったとしても、期限内に届出をしないことは次の変更申請や更新申請の際にマイナス要因としてカウントされてしまいます。
従って、離婚をした場合はできるだけ早く届け出ることをオススメします。
届出に関する書類は以下のリンクからダウンロード可能です。
離婚した日から6か月以内に在留資格変更申請を行う
ここからは帰国をせず、日本に引き続き在留するケースを考えます。
入管で配偶者に関する届出を済ませたら、離婚をした日から6か月以内に在留資格変更申請を行います。
離婚から6か月を超えているのにも関わらず、変更・更新申請を行わないで今のまま在留資格でいる場合、在留資格を取り消されることがあります。
在留資格取消制度
在留資格に対応する活動を一定期間行っていないことが判明した場合、法務大臣は在留資格を取り消すことができます。(入管法第2の4第1項各号)
日本人の配偶者の場合は、6月以上その活動を行わない場合はその対象となるとされています。(入管法第2の4第1項第8号)
詳しくは以下の記事をどうぞ。
離婚後引き続き日本に在留する方法
離婚後6か月以内に配偶者ビザから他の在留資格へ変更申請を行わなければいけないのは分かったと思います。
このように思った人は多いと思います。
以下、外国人が離婚した場合に考えられる申請のバリエーションです。
●就労ビザへ変更
●留学ビザへ変更
●定住者ビザへ変更(可能であれば推奨)
●配偶者ビザを更新(離婚後別の日本人と結婚した場合)
●家族滞在ビザへ変更(離婚後日本にいる外国人と結婚した場合)
以下それぞれ解説します。
就労ビザへ変更
配偶者ビザ(日本人の配偶者等)から、「技術・人文知識・国際業務」に代表される就労ビザへ変更するのが一つの方法です。
しかし、そのような就労系資格への変更は無条件にできるものではありません。
学歴、職歴、勤務先の職種など、一定の要件を満たさなければ変更することはできません。
したがって、就労ビザへのハードルは少々高いです。
留学ビザへ変更
就労ビザが難しい場合、留学ビザも考えられるでしょう。
留学ビザの場合、資格外活動許可を取れば一定時間は働くことが可能ですし、卒業後は就職して就労ビザを取得できる可能性もあります。
なお、留学ビザを申請する場合も、
・学費を工面すること
・留学期間中の生活費を賄える資産を有していること
など、ビザを取得する為には一定の要件をクリアする必要はあります。
定住者ビザへ変更(可能であれば推奨)
要件を満たしている場合、「定住者」への変更申請を行うことができます。
定住者は、日本人の配偶者等と同じく、無制限で就労することができます。
また定住者は、永住権を申請する際も居住要件が緩和される等、就労ビザや留学ビザにはないメリットがあります。
定住者への変更については、以下に一つの章を設けて解説していきます。
配偶者ビザを更新(離婚後別の日本人と結婚した場合)
前配偶者と離婚した後、新たに日本人と結婚することになった場合、そのまま配偶者ビザの更新申請を行うことになります。
しかし更新申請とはいうものの、配偶者が変わるので実質新規申請(認定・変更申請)と同じ要領で審査されることになります。
家族滞在ビザへ変更
離婚後、日本に在留資格を持って在留している外国人と再婚した場合、家族滞在ビザへの変更申請を行うことになります。
なお、家族滞在ビザは配偶者ビザと異なり、就労活動を行うことはできません。
働く場合、資格外活動許可を取得する必要があります。
離婚後に配偶者ビザから定住者ビザへ変更する
上でも述べた通り、「定住者」は就労の制限が無く、永住権の居住年数要件も緩和されており、変更のメリットは多いです。
したがって、日本人と離婚した外国人は、まず定住者へ変更する事は可能か検討します(これを離婚定住と言います)。
定住者ビザへの変更申請が認められるためには、以下のすべての要件に該当している必要があります。
①約3年以上正常な婚姻関係が継続していたことが認められること
②安定した収入や生計を維持できる資産があること
③日常生活に不自由しない程度の日本語能力があること
④公的義務を履行していること
この要件のほかにも、前配偶者との間に子供がおり、その子の親権や監護権を持っている場合定住者ビザは認められやすいです。
①約3年以上正常な婚姻関係が継続していたことが認められること
おおむね3年以上婚姻関係が継続していたらこの要件に該当します。
なお、「3年以上の正常な」婚姻関係が継続している必要がありますので、婚姻中も長い間別居している等の事実があると不許可のリスクが高まります。
また、付与されていた配偶者ビザの在留期間が「3年」もしくは「5年」である必要は無く、「1年」の在留期間でも許可の可能性があります。
②安定した収入や生計を維持できる資産があること
安定した収入といっても、具体的な金額が決まっているわけではありませんが、生計を維持すると考えると年収200万円以上はあった方が良いでしょう。
離婚をした時点で無職であったり、不安定な職に就いている場合は速やかに就職活動をしましょう。
正規雇用されたうえで安定収入を得るのが定住者ビザ取得には欠かせません。
③日常生活に不自由しない程度の日本語能力があること
ここで必要とされる日本語能力は、通常の社会生活が支障なく送れる程度でOKです。
例えば、定住者ビザの申請書の記載や面接において、意思の疎通が可能である程度で良いです。
特定の日本語能力試験に合格している必要はありません。
④公的義務を履行していること
公的義務とは、例えば離婚した際に「配偶者に関する届出」を14日以内に行っているかどうかという事です。
離婚後14日以内に届出を行わなかったからと言って、すぐに罰則が適用されるという事はありません。
しかし、定住者ビザの審査では公的義務をちゃんと履行していないとしてマイナス評価を受けてしまう恐れがあります。
定住者ビザの変更申請のポイント
如何に自分が定住者の要件に該当するかという事を書面で立証できるかが、定住者ビザへの変更申請のポイントとなります。
定住者ビザへの申請の際、審査を有利に運ぶためにも、申請書等の必要書類に加えて以下の書類を積極的に提出することをオススメします。
●申請理由書
●相手に離婚原因がある場合、それを証明する資料
申請理由書
定住者ビザへ変更の場合、離婚に至った理由や事情も重視されることになります。
そこで、申請理由書においては、
●結婚から離婚に至る経緯
●離婚を決めたきっかけやその時の心情
●なぜ今後も日本で生活していきたいのか
●今後どのように生計を立てて日本で生活をしていくのか
など、出来るだけ具体的に詳細を説明しましょう。
相手に離婚原因がある場合、それを証明する資料
DV被害や浮気の発覚など、相手に離婚原因がある場合、それを証明する資料を提出します。
以下はその一例です。
・DV被害にあった際の診断書
・女性相談所からの意見書
・警察相談票
・浮気を決定づける証拠資料
特に日本人からのDV被害が原因で離婚に至った場合、定住者ビザへの変更が認められる可能性が高くなります。
したがって、離婚前の資料はできるだけ取っておくことをオススメします。
離婚して路頭に迷わないためにも、配偶者ビザを取得した時点で永住権の検討を
配偶者ビザは就労の制限もなく、他の在留資格と比べて優遇されています。
しかし一方で、定期的に更新の必要があったり、離婚や死別をした場合に資格を失ってしまうなど、外国人の方にとっては不安定な在留資格であることには変わりません。
そこで、配偶者ビザを有している外国人の方には、婚姻中にできるだけ永住権の検討をオススメします。
永住権を取得する事が出来れば、在留資格の定期的な更新は必要なくなり、突然の死別や離婚といった不幸に見舞われた場合も在留資格を失うことなく日本に滞在できます。
永住権の要件はここでは割愛しますが、
配偶者ビザで日本に滞在を始めた時点から将来の永住権への変更を意識して生活することで、その後の許可の可能性が大幅に高まります。
離婚や死別は自らコントロールできる問題ではありません。
その様な極めて不確実な事象に自らの運命を委ねないためにも、リスクヘッジの一つとして、配偶者ビザを取得した時点から永住権を検討してみるのはアリだと思います。
まとめ
本記事では、配偶者ビザを持っている外国人の方が離婚した場合について解説してきましたが、参考になりましたでしょうか。
離婚はただでさえ、多くの精神的負担が掛かります。
それに加えて、日本にいる外国人は在留資格まで失う恐れもあります。
まだ離婚をしていない場合でも、離婚前にその後の対策を立てることは可能です。
手遅れになってしまう前に、ビザ申請の専門家にご相談ください。