これから配偶者ビザの取得を検討している人や、もうすでにビザを持って日本に在留している人の多くは、将来的に永住権を望んでいます。
今回は、日本の配偶者ビザと永住権の関係に着目し、その違いや永住権取得のメリット、また配偶者ビザから永住権を取得するために必要なことをわかりやすく解説していきます。
この記事を読むとわかること
・配偶者ビザと永住権の関係について
・永住権を取得するメリット
・将来永住権を取得するために気を付けるべきこと
行政書士 明石隆生
ビザ部を運営する編集長、現役行政書士。 行政書士事務所の代表として日々多く業務をこなしながら、専門家としての知識を活かし、日本のビザに関する様々なお役立ち情報を発信している。ビザ関係の記事はすべて自ら執筆。
配偶者ビザと永住権の違いとは
配偶者ビザと永住権は異なるビザ(在留資格)です。
簡単に説明すると、日本人と結婚して、一定の要件を満たすと取得できるのが配偶者ビザ。
配偶者ビザ(もしくは他のビザ)を一定期間有したうえで申請をすることができるのが永住権です。
以下、2つのビザの簡単な比較です。
<配偶者ビザ>
在留資格正式名称 | 日本人の配偶者等 |
---|---|
対象者 | 日本人の配偶者、日本人の特別養子、日本人の実子 |
在留期間 | 5年、3年、1年、6月 |
更新の必要 | あり |
就労制限 | なし |
配偶者と離婚、死別した場合 | 在留資格変更の必要あり |
<永住権>
在留資格正式名称 | 永住者 |
---|---|
対象者 | 法務大臣が永住を認める者 |
在留期間 | 無期限 |
更新の必要 | なし |
就労制限 | なし |
配偶者と離婚、死別した場合 | 在留資格変更の必要なし |
上の表を比較するとわかる通り、永住権のほうがより自由度が高く、現在日本に在留している外国人の方が永住権を取得するメリットは多くあります。
配偶者ビザから永住権は取得しやすい
永住権を取得するためには多くのハードルをクリアしなければならないことから、一般的に取得は難しいとされています。
しかし、配偶者ビザを有している外国人は、ほかの在留資格を有している外国人と比較して、永住権取得のハードルは下がります。
●就労系のビザを有している外国人の場合
引き続き10年以上日本に在留している必要あり(そのうち就労可能なビザを持って直近5年以上の在留が必要)
●配偶者ビザを有している外国人の場合
実態を伴った婚姻が3年以上継続し、引続き1年以上日本に在留していることが必要
このように配偶者ビザを有していると、永住権に必要な居住年数が大きく下がります。
「実態が伴った婚姻が3年以上継続し、引続き1年以上日本に在留する」とは、例えば以下のようなパターンがあります。
以下のような場合は永住権の申請をすることができません。
配偶者ビザから永住権に変更するメリット
以下は永住権を取得するメリットです。
在留期限が無期限
配偶者ビザは在留期限がありますので、数年に一度更新する必要があります。
万が一更新を忘れた場合はオーバーステイとなり、最悪の場合強制送還(退去強制)の恐れもあります。
しかし、永住権の場合は在留期限が無期限なので、数年に一度更新する必要もなく、もちろん更新忘れで最悪のケースに至ることもありません。
これは日本に在留する外国人の方にとっては一番のメリットです。
自国に国籍を置いたまま、日本に無期限で在留が可能
永住権と似た制度で、帰化があります。
外国人が帰化した場合は完全に日本人になるので、在留期限という概念もなくなり、普通の日本人として生活することになります。
就労制限などもちろんなく、日本のパスポートや、参政権が与えられます。
しかし、日本では二重国籍は認められていませんので、外国人が日本人に帰化した場合、自国の国籍を離脱する必要があります。
一方永住権では、自国に国籍を置いたまま、日本に無期限に在留することができます。
永住の場合は参政権などは与えられず、日本人と同等な権利を与えられるわけではありませんが、それでも無期限で在留できるメリットは大きいでしょう。
日本人配偶者と離婚、死別した場合でも在留資格を失うことはない
配偶者ビザを持って日本に在留している外国人の場合、日本人の配偶者と離婚をしたり、死別してしまった場合は、在留資格を変更する必要があります。
離婚や死別といった事象は、自らコントロールすることができないにもかかわらず、万が一起こった場合、外国人の方は極めて不安定な立場に立つことになります。
しかし、一度永住権を取得してしまえば、万が一離婚や死別に至ってしまった場合でも、在留資格の変更を迫られることはありません。
永住権を取得することにより、日本でより安定的な地位を築くことができるメリットは大きいです。
社会的信用が上がり、住宅ローン等が組みやすくなる
日本では、外国人が不動産を購入または所有することは許されていますが、外国人が金融機関から借り入れをするのは簡単なことではありません。
多くの金融機関は、永住権を持っていることを住宅ローン等の申し込み要件としています。
したがって、永住権を持っていない外国人は融資を受けることは難しく、永住権を持っている外国人は住宅ローン等を組みやすくなるのです。
これから日本に根を下ろして生活しようとする外国人にとっては、住宅ローンが通りやすくなることはアドバンテージになるでしょう。
配偶者ビザから永住権を取得するための7つの要件
永住権を取得するための7つの要件を以下で解説していきます。
1.居住要件
これはすでに上の章で解説しましたので簡単に。
配偶者ビザを持っている外国人は、実態を伴った婚姻が3年以上継続し、引続き1年以上日本に在留していることが必要です。
外国人の方の中には、日本人との婚姻関係が3年以上経過し、引続き1年以上日本で暮らしているのにも関わらず、
配偶者ビザではなく、その他のビザ(技術・人文知識・国際業務等)で在留している方もいます。
この場合は配偶者ビザを有していなくても、要件は満たされていると考えます。
2.現に有している在留資格について、最長の在留期限を有していること
配偶者ビザの最長の在留期間は「5年」です。
永住権の申請のためには、基本的に最長の在留期限を有していることが必要とされていますが、現状は「3年」の在留期限を有していれば申請は可能とされています。
多くの場合、一番最初に与えられる配偶者ビザの在留期間は1年間です。
したがって、何回かビザを更新して、在留期間が「3年」なったタイミングで永住権の申請を検討することになります。
在留期間については以下の記事を参考にしてください。
3.在留歴
配偶者ビザを持って日本で生活しているにもかかわらず、1年のうちの多くを海外で過ごしていると永住申請は難しくなります。
永住申請では、1年のうち3か月連続して、もしくは1年間でトータル100日以上の出国歴があると、今までの在留歴がリセットされ、申請要件を満たさなくなってしまうといわれています。
この数字は状況に応じて上下するようですが、概ねの目安となる数字です。
配偶者ビザを持つ外国人の方であれば、1年のうち上記のように長い出国歴があると、その年は永住申請をすることができません。
更にもう1年日本に在留をして、要件を満たしたうえで申請する必要が出てくるのです。
永住申請予定がある方で、長期の海外出張などがある方は、出国期間については十分に気を付けた方がよいでしょう。
4.住民税や年金などの公金を支払っていること
永住権を申請するためには、住民税や年金などの公金を滞納することなく、納付期限内に支払うことが必要となります。
多くの会社員の方は、会社の社会保険に加入しており、各種税金が天引きされているため滞納の心配はないでしょう。
しかし、自営業の方や、社会保険に加入していない事業者の下で働いている場合は注意が必要です。
住民税の納税状況は直近3年分、年金の納付状況は直近2年分を確認されます。
それぞれの納付状況はかなり厳しくチェックされ、1回でも支払いが遅れてしまうと不許可の恐れが跳ね上がります。
万が一住民税や年金の支払いが遅れている場合は、期限通りに支払を始めてから2年間(3年間)経過後、改めて申請する必要があります。
5.安定した収入があること
本来、入管のガイドラインには安定収入があるべきという要件(独立生計要件)はありませんが、実務上は申請者の収入も審査上重視されています。
年収のハードルですが、大体300万円以上と言われています。
気を付けるポイントとしては、この300万円という数字は世帯年収ではないということです。
例えば、以下のケースです。
申請者(年収280万円)+日本人配偶者(年収280万円)=560万円
この場合、世帯年収は560万円あり、一見審査要件を満たしそうですが、どちらかの年収が単独で300万円を超えていないと不許可の恐れがあります。
また、申請者に被扶養者がいる場合は、300万円+被扶養者一人当たり70万円が必要になります。
(例1)
家族構成:申請者+日本人配偶者(被扶養者)
300万円+70万円+=370万円以上の収入が必要
(例2)
家族構成:申請者+日本人配偶者(被扶養者)+子供2人
300万円+70万円+70万円×2=510万円以上の収入が必要
ということになります。
したがって、家族内に被扶養者が多い場合はより多くの年収が必要となりますので注意が必要です。
外国人の方が専業主婦で無収入、もしくは被扶養者の範囲内の収入しかない場合、日本人の配偶者の扶養に入っていることもあります。
その場合、上記の条件(年収300万円以上)という要件は、日本人側が満たしている必要があります。
これは収入だけでなく、上で解説した住民税などの公金の支払いの場面についても当てはまります。
6.日本での犯罪歴がないこと(懲役、禁固、罰金に科せられたことがないこと)
永住申請をするには、過去に犯罪を犯して懲役、禁固、罰金などの処分を受けてないことが必要になります。
過去に処分を受けている場合、一定の期間が経過している必要があります。
<処分後、永住申請ができるようになるまでの期間>
●懲役刑、禁固刑の判決を受けている場合→刑務所出所後10年経過
●執行猶予付き判決→猶予期間が満了してから5年経過
●罰金・科料→支払いを終えてから5年経過
また、懲役、禁固、罰金とは性質が異なりますが、交通違反にも気を付ける必要があります。
一時停止違反、駐車禁止違反などの軽微な違反に関しては、過去5年以内に5回以内(1年に1回程度)であれば問題ないといわれています。
7.身元保証人がいること
永住権の申請をするためには、身元保証人が必要です。
通常、日本人配偶者の方が身元保証人になることが多いです。
身元保証人は、日本人、もしくは永住権を有している外国人で、安定した収入があり納税などの公的義務を果たしている必要があります。
この身元保証人ですが、借金の連帯保証人とは異なる性質のもので、身元保証人は法的責任を負うことはありません。
まとめ
本記事では、配偶者ビザと永住権の違いから、永住権を取得するための要件などを解説してきましたが、参考になりましたでしょうか。
多くの外国人が望むように、永住権を取得すると多くのメリットがあります。
現在配偶者ビザをお持ちの方は、3年の在留期間を与えられたタイミングで永住権の申請を検討することをオススメします。
配偶者ビザや永住権への変更について等、お悩みやお困りごとがある方は、
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