配偶者ビザを持って日本に在留している外国人でも、長期間日本から出国する際は「再入国許可」を受けたうえで出国する必要があります。
そこで、本記事ではビザ申請専門の行政書士である筆者が、再入国許可の制度と配偶者ビザを持っている人が気を付けるべきことについて解説していきます。
<この記事が参考になる人>
・近いうち長期で出国する予定がある中長期の在留資格を持った外国人の人
・出国期間が配偶者ビザに影響があるかどうか知りたい人
・再入国許可の制度について詳しく知りたい人
目次
配偶者ビザを持つ人の再入国許可について
中長期の在留資格をもって日本に在留する外国人が、一時的に日本を出国して、再入国しようとする場合に必要となるのが再入国許可です。
再入国許可が必要となるのは、基本的に「中長期の」在留資格をもつ外国人なので、短期ビザを持つ人の再入国許可は認められません。
配偶者ビザは「中長期」の在留資格であるため、配偶者ビザを持つ人が再入国する際は、再入国許可が必要となります。
再入国許可にも以下の2つの種類があります。
・通常再入国許可(1年を超えて出国する場合必要)
・みなし再入国許可(1年以内に再入国する際に必要)
2つの再入国許可を比べると、みなし再入国許可の方が圧倒的に簡単な手続き(出国の際カードに必要事項を記入するだけ)になります。
以下の章でそれぞれの制度について詳しく見ていきましょう。
通常再入国許可の制度
通常再入国許可の制度を順序だててみていきましょう。
概要
通常、日本に入国する際には査証(ビザ)が必要となります。
しかし、日本にすでに住んでいる外国人が一時的に出国する度に、新規と同じ手続きを踏ませるのは相当な負担を強いることになってしまいます。
そこで、出国前に通常再入国許可を取得することによって、再入国時に査証(ビザ)が免除され、簡易的な手続きで入国することが可能になるのです。
再入国許可には1度だけ有効なものと、数回使用できる数次再入国許可があります。
再入国許可を受けずに出国した場合や、出国先で期限が切れてしまった場合、在留資格は消滅してしまいます。
したがって、例え配偶者ビザで5年の在留期間があったとしても、再入国許可の期限切れですべてが無に帰してしまう恐れがあるので、注意が必要です。
有効期間
配偶者ビザを有する人の通常再入国許可の有効期間は、5年を超えない範囲で定められます。
再入国許可は、在留期間の範囲内でしか与えられません。
つまり、在留期間が3年の配偶者ビザを持つ人には、3年以下の在留資格が与えられることになります。
また、相当な理由があると認められるときは、1年を超えない範囲で再入国許可の期間を延長することができます。
再入国許可期限日を1日でも過ぎて日本に入国すると在留資格は消滅してしまうため、
もしもの時に期限を延長することができるのが通常再入国許可のメリットです。
なお、延長申請は海外の日本領事館等で手続きを行います。
対象者
通常再入国許可を付与してもらう際の条件としては、
①正規の在留者で相当期間日本に在留する者であること
②在留期間の満了日以前に日本に再入国する意図をもって出国すること
この2点に該当している必要があります。
また、入管法は以下に該当する人の通常再入国許可は原則として認めないとしています。
①懲役3年以上や禁固に当たる罪について訴追されている者、もしくは逮捕状等が出ている者等(入管法第25条の2第1項)
②日本の外交上その他の利益を害する行為又は公安を害する行為を行うおそれがある者
③「短期滞在」の在留資格をもって滞在する者
④難民認定申請を行っていることを理由に「特定活動」の在留資格を持って在留する者
⑤その他許可する事が適当でないと認められる者
申請方法
再入国許可の申請先は、申請者の住居地を管轄する地方出入国在留管理局となります。
管轄の窓口は入管HPから確認してください。
以下、申請の必要書類となります。
手数料は1回限り有効な再入国許可が3,000円、数回有効なものが6,000円です。
みなし再入国許可の制度
それでは次に、みなし再入国許可の制度について解説していきます。
概要
みなし再入国許可とは、出国の日から1年以内に再入国する場合には、原則として通常再入国許可を不要とするものです。
対象者は、在留資格を持って日本に在留する外国人で、短期滞在の外国人は除きます。
みなし再入国許可の有効期間は1年間で、通常再入国許可と異なる点は、有効期間の延長をすることはできません。
対象者
対象者は、有効なパスポート、在留資格を持って日本に滞在している外国人です。
以下に該当する人は、みなし再入国許可の対象とはならないため、日本から出国する際は通常再入国許可を取得する必要があります。
①短期滞在で日本に在留する者
②3月以下の在留期間を決定された者
③在留資格取消手続きにかかる意見聴取通知書の通知を受けた者
④出国確認の留保者
⑤収容令状を受けている者
⑥難民認定申請中の「特定活動」の在留資格をもって在留する者
⑦再入国許可が要すると認めるに足る相当な理由があると法務大臣が認定する者
申請方法
出国の際、空港等に再入国EDカードがあるので(上図参照)、必要箇所にチェックを入れ、入国審査官に提示します。
手数料も無料な為、通常再入国許可と比べるととても簡易的な手続きとなります。
注意点
上記でも述べていますが、有効期間を1年を超えて延長することができないので注意が必要です。
つまり、どんな理由があっても延長することはできません。
・滞在国で暴漢におそわれ、けがを負って入院していて出国が遅れた
・飛行機がストライキ等の理由で一定期間飛ばなかった
など、本人に責任が無かったとしても延長が認められないため、万が一期限を過ぎてしまうと在留資格が消滅してしまい、取り返しがつかなくなってしまいます。
配偶者ビザを有する外国人が出国する際に気を付けること
配偶者ビザがを有する外国人は、出国から1年以内に入国する場合はみなし再入国許可で、簡単な手続きで出国することが可能です。
しかし、再入国許可の有効期間内だからと、長期間出国をしていると後々不利益を被る恐れも出てきます。
ここでは、特に配偶者ビザを有する人が注意するべき点を解説します。
長期間の出国で在留資格が取消しになる恐れ
配偶者ビザを有する外国人が、配偶者としての活動を継続して6か月以上行わないでいる場合、在留資格取消しの対象になります。
●特別な理由もなく6月以上出国し、夫婦は別居状態となっている
このような場合、在留資格取消の対象となる恐れがあります。
また、在留資格取消には該当しない場合でも、長期間出国していたという事実は更新申請の審査時にマイナスの要因としてとられ兼ねません。
したがって、日本に配偶者ビザをもって在留するという観点からは、理由のない長期出国は避けた方が賢明です。
配偶者ビザの在留資格取消制度については、以下の記事で詳しく解説しています。
永住権や帰化申請を将来行う場合、長期出国には注意
配偶者ビザを持っている外国人で、将来永住権や帰化の申請を考えている人は多いと思います。
永住権や帰化の申請では、一定期間日本に住んでいることが必要とされますが、
1年間でおおむね3月以上出国している場合、出国前の居住年数がリセットされてしまいます。
つまり、今まで2年間日本に住んでいて、あと1年で永住権申請の要件を満たすところだとしても、3月以上出国すると今までの2年間はカウントされなくなってしまうのです。
将来は永住や帰化を検討されている方は、出産や親族の介護で長期出国する際は注意が必要です。
まとめ
本記事では再入国許可について、特に配偶者ビザを有する外国人に焦点を当てて解説していきましたが、参考になりましたでしょうか。
日本で在留資格を持って住んでいる以上、長期間の出国はリスクを伴う事もあります。
長期出国の予定がある際は、事前にどのような手続きが必要か、注意しなければいけない点はなにかを確認してから行動しましょう。