外国人をこれから雇う予定がある人や、外国人のパートナーがいる人は、「ビザ」や「在留資格」という言葉を聞く機会が多いのではないでしょうか。
今回は、ビザ申請を専門とする行政書士が、ビザと在留資格について、なじみの薄い人にも分かり易いように徹底解説していきます。
この記事を読めば、在留資格・ビザ(査証)についての基本を学ぶことができます。
<この記事が参考になる人>
・在留資格とは何かを知りたい人
・ビザとは何かを知りたい人
・入管業務に興味のある行政書士の人
目次
在留資格とは違う、ビザ(査証)の本当の意味
まずはビザについて解説していきます。
ビザとは、日本語では査証といいます(ここでは分かりやすいように、本来のビザを査証と呼びます)。
外国にある日本の大使館・領事館が、日本に渡航しようとする外国人のパスポートや条件をチェックしたうえで、その外国人の日本への入国や滞在が適当であるとする、推薦状です
日本の法律では、日本に入国する外国人は、入国の申請をする際に「査証を所持していること」を必要としています(査証免除国を除いて)。
したがって、外国人が日本に入国する際、入国審査官の審査が終了して上陸許可が与えられた時点で、基本的に査証は使用済みとなります。
要約すると、
「査証」 = 日本入国の為に必要なもの。そして入国審査が終わると使用済みになる。
ということで、後述する在留資格とは性質が異なるものという事がわかるかなと思います。
査証についての必要な情報を、一目でわかるように以下の表にまとめてみました。
[申請場所] 申請人の居住国にある日本国大使館・総領事館
[申請者] 原則、申請人本人
[必要書類] 申請人の国籍、渡航目的によって異なるので、詳細は外務省HPで確認
[取得までの必要日数] 申請内容に特に問題のない場合、申請受理の翌日から起算して5業務日。ケースによって長引く場合あり
[有効期間] 原則発給翌日から起算して3か月間で、1回の入国のみ有効。有効期間内に日本での入国審査を受ける必要あり(数次ビザも存在する)
[査証の発給基準]
(1)申請人が有効な旅券を所持しており、本国への帰国又は在留国への再入国の権利・資格が確保されていること。
(2)申請に係る提出書類が適正なものであること。
(3)申請人が日本において行おうとする活動又は申請人の身分若しくは地位及び在留期間が、入管法に定める在留資格及び在留期間に適合すること。
(4)申請人が入管法第5条第1項各号のいずれにも該当しないこと。
[査証の種類] 外交・公用査証、就業査証、一般査証、短期査証、特定査証、高度専門職査証、医療滞在査証
ビザは必ずしも「査証」という意味で使われていない
「日本企業で働くから就労ビザを申請する・・・」
「日本人と結婚するので、配偶者ビザに変更しよう・・・」
「ビザ」という言葉は巷ではこのような使い方をされていることが多いです。
このように使われている「ビザ」という言葉は「査証」を意味せず、「在留資格」のことを意味します。
例えば、巷で言われる配偶者ビザとは
「日本人の配偶者等」
という在留資格を意味しています。
就労ビザとは、比較的多くの場合
「技術・人文知識・国際業務」
等といった、一定の仕事に就くことが認められている在留資格の事を指します。
このように、本来ビザと在留資格は異なる性質にもかかわらず、巷では一般的に「在留資格=ビザ」として通用しています。
何故、このように実際とは異なった意味の使い方をされてるかは定かではありませんが、恐らく便宜上のものでしょう。
「在留資格」というより「ビザ」といった方が、簡単で分かり易いイメージがありますからね。
以下では在留資格とはなにか、詳しく解説していきます。
在留資格とは
在留資格について説明します。
外国人は様々な目的があって日本にやってきます。
日本で働きたい・・・
日本で勉強したい・・・
日本で妻(夫)と暮らしたい・・・などなど
日本で活動しようとする外国人は、法律(入管法)で定められた「在留資格」を与えられてはじめて、日本に適法に在留する事になります。
簡単に言うと、
在留資格 = 外国人が日本に在留し活動することができる身分・地位の種類を類型化したもの
という事になります。
外国人が日本に適法に在留するためには、1個の在留資格と、1個の在留期間が決定されることになっています。
一人の外国人が、複数の在留資格を持っていたり、期間の異なる在留資格を持つことは認められていません。
外国人の活動による類型(活動類型資格)
在留資格は、大きく2つの類型に分けられます。
それは、「活動類型資格」と「地位等類型資格」です。
活動類型資格とは、日本においての外国人の活動によって分類される在留資格となります。
たとえば、Webデザイナーとして日本の会社で働くことになる場合は「技術・人文知識・国際業務」という在留資格を与えられることになります。
これは、Webデザイナーとしての活動に着目して与えられる資格です。
他にも、日本の学校に留学にきた外国人の場合は、留学という活動に対して「留学」という在留資格が与えられます。
外国人の地位による類型(地位等類型資格)
地位等類型資格は、外国人の身分や地位によって与えられる在留資格を言います。
分かりやすいところで言うと、外国人が日本人と結婚して日本に暮らす場合です。
この場合、外国人には日本人の配偶者としての地位に対して、「日本人の配偶者等」という在留資格が与えられます。
日本人配偶者等という在留資格に該当する人は
・日本人の配偶者
・日本人の子として出生した者
・特別養子
の3種類です。
就労の制限はなく、基本的にどのような仕事にも就くことができます。
このように、在留資格によって身分や活動範囲が類型化されています。
(なお、配偶者ビザに関しての詳細は以下の記事をご覧ください)
https://visabu.jp/spouse-visa/
在留資格を一挙紹介
在留資格は約30種類も存在しており、在留資格によって、それぞれ滞在することのできる期間や活動内容が決められています。
以下は在留資格一覧表ですので、長いですが参考にしてみてください。
<活動類型資格>
在留資格 | 該当例 | 在留期間 |
外交 | 外国政府の大使, 公使,総領事,代 表団構成員等及び その家族 |
外交活動の期 間 |
公用 | 外国政府の大使 館・領事館の職員, 国際機関等から公 の用務で派遣され る者等及びその家 族 |
5年,3年,1 年,3月,30日 又は15日 |
教授 | 大学教授等 | 5年,3年,1年 又は3月 |
芸術 | 作曲家,画家,著 述家等 |
5年,3年,1年 又は3月 |
宗教 | 外国の宗教団体か ら派遣される宣教 師等 |
5年,3年,1年 又は3月 |
報道 | 外国の報道機関の 記者,カメラマン |
5年,3年,1年 又は3月 |
高度専門 職 1号 |
ポイント制による高 度人材 |
5年 |
高度専門職 2号 | ポイント制による高 度人材 |
無期限 |
経営・管 理 |
企業等の経営者・ 管理者 |
5年,3年,1 年,6月,4月又 は3月 |
法律・会 計業務 |
弁護士,公認会計 士等 |
5年,3年,1年 又は3月 |
医療 | 医師,歯科医師, 看護師 |
5年,3年,1年 又は3月 |
研究 | 政府関係機関や私 企業等の研究者 |
5年,3年,1年 又は3月 |
教育 | 中学校・高等学校 等の語学教師等 |
5年,3年,1年 又は3月 |
技術・人 文知識・ 国際業務 |
機械工学等の技術 者,通訳,デザイ ナー,私企業の語 学教師,マーケティ ング業務従事者等 |
5年,3年,1年 又は3月 |
企業内転 勤 |
外国の事業所から の転勤者 |
5年,3年,1年 又は3月 |
介護 | 介護福祉士 | 5年,3年,1年 又は3月 |
興行 | 俳優,歌手,ダン サー,プロスポーツ 選手等 |
3年,1年,6 月,3月又は15 日 |
技能 | 外国料理の調理 師,スポーツ指導 者,航空機の操縦 者,貴金属等の加工 職人等 |
5年,3年,1年 又は3月 |
特定技能 1号 | 特定産業分野に属 する相当程度の知 識又は経験を要す る技能を要する業 務に従事する外国 人 |
1年,6月又は4 月 |
特定技能 2号 | 特定産業分野に属 する熟練した技能 を要する業務に従 事する外国人 |
3年,1年又は6 月 |
技能実習 1号 | 技能実習生 | 法務大臣が 個々に指定する 期間(1年を超え ない範囲) |
技能実習 2号 | 技能実習生 | 法務大臣が 個々に指定する 期間(2年を超え ない範囲) |
技能実習 3号 | 技能実習生 | 法務大臣が 個々に指定する 期間(2年を超え ない範囲) |
文化活動 | 日本文化の研究者 等 |
3年,1年,6月 又は3月 |
短期滞在 | 観光客,会議参加 者等 |
90日若しくは3 0日又は15日 以内の日を単位 とする期間 |
留学 | 大学,短期大学, 高等専門学校,高 等学校,中学校及 び小学校等の学 生・生徒 |
4年3月,4年, 3年3月,3年, 2年3月,2年, 1年3月,1年, 6月又は3月 |
研修 | 研修生 | 1年,6月又は3 月 |
家族滞在 | 在留外国人が扶養 する配偶者・子 |
5年,4年3月, 4年,3年3月, 3年,2年3月, 2年,1年3月, 1年,6月又は3 月 |
特定活動 | 外交官等の家事使 用人,ワーキング・ ホリデー,経済連携 協定に基づく外国 人看護師・介護福 祉士候補者等 |
5年,3年,1 年,6月,3月又 は法務大臣が 個々に指定する 期間(5年を超え ない範囲) |
<地位型等類型資格>
在留資格 | 該当例 | 在留期間 |
永住者 | 法務大臣から永住 の許可を受けた者 |
無限期 |
日本人の 配偶者等 |
日本人の配偶者・ 子・特別養子 |
5年,3年,1年 又は6月 |
永住者の 配偶者等 |
永住者・特別永住 者の配偶者及び本 邦で出生し引き続 き在留している子 |
5年,3年,1年 又は6月 |
定住者 | 第三国定住難民, 日系3世,中国残 留邦人等 |
5年,3年,1 年,6月又は法 務大臣が個々に 指定する期間 (5年を超えない 範囲) |
日本で働ける在留資格・働けない在留資格
日本に適法に在留する為には在留資格が必要という事はお分かりになったと思います。
しかし、その中でも在留資格によって、日本で働くことができる場合とできない場合があります。
さらに、ある在留資格によって仕事ができる場合でも、決まった範囲でしか仕事できない場合と、無制限に仕事ができる場合があります。
ここでは以下のようにグループ分けしています。
・業務限定で就労できる資格(業務限定就労可能資格)
・無制限に就労できる資格(無制限就労可能資格)
・原則就労ができない資格(就労不能資格)
なお、法律上就労可能資格とは、その在留資格等を有していることにより、
「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」
とされています。
以下、それぞれのグループごとに在留資格をまとめてみました。
<業務限定就労可能資格>
外交、公用、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理・法律・会計業務、医療、研究、教育、技術、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、技能実習、特定活動の一部
<無制限就労可能資格>
永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者、特別永住者
<就労不能資格>
文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在、特定活動の一部
※上記の資格に該当しても「資格外活動許可」を取得すれば、決められた時間内であれば就労することが可能です。
罰則もあるので要注意
就労可能かどうかは在留資格によって異なるという事はわかりました。
しかし万が一、自分が持っている在留資格の範囲外で就労等についてしまうと、資格外活動罪に該当し、相応の罰則があるので要注意です。
業務限定就労資格を有する外国人、又は就労不能資格を持つ外国人が、資格外活動許可を得ずに限定された範囲を超えて就労活動を行うこと
例えば、留学のために日本に来日し、留学の在留資格を有している状態で、資格外活動許可を受けずにコンビ二でバイトする等がこの罪に当たります。
最悪の場合、罰金や懲役刑、そして日本から退去しなければならないという事態が待っていますので、軽い気持ちでの資格外活動は絶対にしない方がいいです。
まとめ
今回は在留資格とビザについて解説していきましたが、それぞれの内容についてお分かりいただけたでしょうか。
在留資格は種類も多く、突っ込んでいくと奥が深いんです。
このブログでは、ビザに関する幅広い情報を分かり易く発信していますので、ここで在留資格やビザについての基礎が頭に入った人は是非他の記事も覗いてみてください。
最後にこの記事の内容をまとめました。
<この記事のまとめ>
・ビザ(査証)は在外日本大使館・総領事館が発行する、外国人の日本への入国が適当であるとする推薦状
・巷で言われるビザは査証ではなく、在留資格を意味していることが多い
・在留資格約30種類存在する
・就労可能な在留資格と、就労できない在留資格が存在する