「配偶者ビザは同居してないと許可が下りないって聞いたけど、ほんとですか?」
このような相談はよくあります。
結論を先に言うと、
配偶者ビザは夫婦で同居していなくても、その別居に合理的な理由があると入管に認められれば許可は下ります。
しかし、理由のない同居は不許可の恐れが極めて高いです。
本記事では、別居と配偶者ビザについて、ビザ申請専門の行政書士である筆者が、初めての方でもわかりやすいように解説していきます、
<この記事が参考になる人>
・配偶者ビザをもって日本に在留している外国人、またその配偶者
・現在別居状態となっているが、配偶者ビザの更新ができるかどうか不安な人
・配偶者ビザについてより理解を深めたい人
目次
夫婦の別居は配偶者ビザの申請にマイナスの影響がある
特別な理由がないにも関わらず夫婦が別居している場合、配偶者ビザの申請は不許可になる恐れが多分にあります。
ちなみに、夫婦の同居が重要視されるのは、配偶者ビザの変更申請と更新申請の時です。
認定申請の場合、そもそも国外にいる外国人配偶者を呼び寄せることになるので、日本入国後に夫婦で同居する予定があることが申請の前提とされています。
配偶者ビザで夫婦の同居が重要視される理由
出入国在留管理庁(入管)は、配偶者ビザの審査を行う上で
「その夫婦の婚姻関係の実体はあるか」
という事をとても重視しています。
そして、入管の配偶者ビザにおける審査要領でも、
「社会通念上の夫婦の共同生活を営むといえるためには、特別な理由が無い限り、同居して生活をすること」
を要しています。
このように、入管は夫婦の同居の有無を一つの基準として、婚姻関係の実体があるかどうかを判断しています。
たしかに、夫婦の形は一様ではありませんので、週末婚や通い婚という形をとる夫婦もいると思いますし、それは認められるべきです。
しかし、やはり配偶者ビザを取得するという観点で、審査を有利に運びたいなら別居は極力避けた方が賢明です。
入管は横行する偽装結婚を未然に防ぐために「同居」という判断基準を設け、厳しく審査を行っているのです。
理由のない別居は在留資格の取消しの対象にも
配偶者ビザをもって日本に在留している夫婦が、理由の無い別居を6か月以上続けていると、在留資格取り消しの処分を受けてしまう恐れもあります。
入管法第22条の4
「日本人の配偶者等」の在留資格をもって日本にいる外国人が、配偶者としての活動を6か月行っていない事実が判明した時は、在留資格を取り消すことができると定めています。
在留資格の取消しに該当する状態が続くことは、例え資格が取消されなくても在留状況不良と判断されるので、今後の申請の際の審査に響きます。
やむを得ない事情がある場合、別居が認められる可能性が高い
配偶者ビザを取得する為には、夫婦が同居していることが大前提です。
しかし、別居しているという外形的な事実だけをもって不許可とされるわけではありません。
やむを得ない事情がある等、その別居に合理性があれば配偶者ビザの許可が下りる可能性があります。
京都地裁平成27年11月6日判決
現代社会における婚姻概念に多様化を理由に、外国人と日本人の婚姻関係が実体を伴う限りは、週一しか同居してない夫婦でも「日本人の配偶者等」の在留資格の該当性を認めた判決が出ました。
別居の理由に合理性がある場合には以下のような例が挙げられます。
●遠方の大学に通う外国人留学生と、首都圏の会社に正社員として勤める日本人会社員が結婚をし、外国人学生が大学を卒業をして上京するまでの間はやむを得ず別居をしている場合
●外国人配偶者の勤務先から単身赴任の要請があり一定期間移住することになったが、日本人側は現在夫婦で居住している近隣の会社に長年勤めており、退職して一緒に移住することができない場合
このような場合、その別居にやむを得ない事情があるとして、配偶者ビザの許可が出る可能性は高くなるでしょう。
別居中の配偶者ビザ申請で不許可の恐れの高い事例
例え夫婦の別居に理由があったとしても、その理由に合理性が無いと判断されると不許可の恐れが高まります。
一つ事例(フィクション)を紹介します。
フィリピン国籍の女性は3年前から日本人夫と結婚し、「日本人の配偶者等」の在留資格を持って日本に滞在しています。
日本人夫は会社員で東京都内で働いています。
最近妻は神奈川県で飲食店の経営を始めた関係で毎日家に帰ることはできず、週に2回ほど都内の家に帰る生活をしています。
この夫婦は仕事の都合で、このような生活が数年続く予定です。
このような状態では、配偶者ビザの更新が許可されない恐れがあります。
仕事の都合上で短期間このような状態が続くのはやむを得ないかもしれませんが、数年続くのは問題です。
また、このケースでは会社から単身赴任を要請されたわけではありません。
個人事業主である妻は、何故家から離れている場所で働き、別居をしなければならないのか?詳細な理由を説明する必要があります。
そしてこれがただの飲食店では無く、水商売系のお店だった場合、審査はさらに難航するでしょう。
水商売に対する入管の考えは、
「普通は配偶者が水商売で働くのは認めないはず。婚姻後も水商売で働くことを許しているのはおかしい。婚姻関係の実体に疑義がある」
というものです。
別居状態で配偶者ビザの申請を行う際の対策
現在何らかの理由があり別居してる状態で、且つ現在のビザ許可期限が迫っているあなたへ、別居状態で配偶者ビザを申請する際の対策を紹介します。
理由書を添付して経緯を詳細に説明する
別居状態で申請を行う場合、その経緯を説明した理由書を作成することは必須です。
理由書の内容としては、
・別居に至った経緯
・別居期間
・別居中の夫婦のコミュニケーション
・別居中の生活費をどうやりくりしているかについて
など、可能な限り詳細に記載し、夫婦の別居には合理性があるという事を審査官に印象付けることが大切になってきます。
一般的な理由書の書き方については以下の記事で詳しく解説しています。
LINE等の通信履歴、送金履歴などを提出する
別居中に頻繁に連絡を取り合っていること、コミュニケーションをしっかりとれていることを証明するために、LINE等の通信履歴を提出しましょう。
また、夫婦のどちらかが別居の費用を援助しているなどの事実がある場合、送金履歴なども提出できると良いです。
往復の旅券や交通系電子マネーの乗車履歴の提出
お互いの居住地に行き来してしていることの証拠として、往復の旅券や交通系電子マネーを提出するのも有効です。
データに残らない切符などは捨てずにとっておきましょう。
スナップ写真の提出
別居はしているが、しっかり定期的に会っていて良好な関係を気付いているという事を証明するために、二人の写真を多く提出すると良いでしょう。
更新申請の場合、出入国在留管理庁はスナップ写真の提出を求めていませんが、あえて複数枚提出できると良いと思います。
別居先(単身赴任先)の住所で住民票を取り直す
別居をする場合、忘れずに住民票を移住先に変更しましょう。
実は別居中なのにもかかわらず、住民票を移さず、同居していることにして申請を行ったことが発覚した場合、虚偽申請となって配偶者ビザは一発不許可です。
また、万が一発覚した場合、虚偽申請をして不許可になったという事実は入管のデータに永久に残り続けます。
そうなると今後の人生にも影響してきてしまうので、別居を正直に申告することはもちろん、住民票の届出義務もしっかり果たすことをオススメします。
まとめ
本記事では、夫婦が別居している際の配偶者ビザへの影響などを解説していきましたが、参考になりましたでしょうか。
配偶者ビザを取得する為にも、出来るだけ長い在留期間の在留資格をゲットするためにも、別居は出来るだけ避けたいところではあります。
しかし、別居をしているという事実だけでは、配偶者ビザは不許可にはならないので、別居しているからと諦める必要はまずありません。
「そうは言っても自分で申請するのは不安だなぁ・・・」
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