2021年現在も、偽装結婚は後を絶ちません。
外国人の男と日本人の女の偽装結婚をあっせんしたなどとして、トルコ国籍の男らが逮捕されました。https://t.co/J8F6ufm6XE pic.twitter.com/22bAjZJGVR
— メ~テレnews (@nagoyatv_news) October 21, 2021
この偽装結婚と配偶者ビザというのは切っても切れない関係にあります。
なぜなら、偽装してまで国際結婚をする目的は、日本の配偶者ビザにあるからです。
今回は偽装結婚と配偶者ビザについて、ビザ申請専門の行政書士である筆者が解説していきます。
<この記事が参考になる人>
・配偶者ビザの申請が信憑性を疑われて不許可になってしまった人
・偽装結婚と疑われる恐れのある事例を知りたい人
・配偶者ビザと偽装結婚について詳しく知りたい人
目次
国際的な偽装結婚が横行する理由は配偶者ビザにある
国際的な偽装結婚の主な目的は、配偶者ビザの入手です。
日本の在留資格は様々なものがありますが、その中でも特に自由度が高いものが「日本人の配偶者等」という在留資格、要するに配偶者ビザです。
留学ビザや就労ビザでは就労に一定の制限がありますが、配偶者ビザでは就労の制限がありません。
日本で無制限に就労できるというのは、日本に出稼ぎに来たい外国人にとってはとても魅力的映ります。
また、日本で外国人をいいように利用したいと企む者にとっても、無制限で合法的に働かせることができる配偶者ビザは魅力的でしょう。
さらに、配偶者ビザをもって一定の要件を満たすと永住権の要件も緩和されます。
永住権を入手できれば、期限ごとの更新も必要なくなりますので、配偶者ビザよりも格段に利便性が上がります。
このように、まさしく配偶者ビザは日本に来たい外国人や彼らを利用する者にとって、偽装結婚をしてまでも欲しい在留資格なのです。
偽装結婚を水際で防ぐため、配偶者ビザの審査は厳しい
上記の様な配偶者ビザのメリットから、偽装結婚を利用した在留資格の不正取得が後を絶ちません。
出入国在留管理庁(入管)はそのような偽装結婚からの配偶者ビザ不正取得を水際で防ぐため、審査を厳格に行っています。
これが、配偶者ビザの審査は厳しいと言われる所以です。
配偶者ビザの審査
配偶者ビザの審査では、自らは正真正銘の結婚であるという事を、申請者自身が書面で立証していく必要があります。
したがって、本当に正真正銘の夫婦なのにもかかわらず、それを提出資料で証明することが出来なければ、容赦なく不許可になることもあります。
入管が慎重に審査する、婚姻の信憑性
入管が配偶者ビザの審査の際に重要視するポイントは、
●婚姻の信憑性
●婚姻の安定性
●婚姻の継続性
この3つと言われています。
この中でも、偽装結婚を防ぐために特に慎重に審査されるのが「婚姻の信憑性」です。
実際の配偶者ビザの申請では、婚姻の信憑性を証明させるために以下のような書類を提出していきます。
●夫婦や家族で写っているスナップ写真
●LINE、SKYPE、メール等の通信履歴
●自宅の外観、内観の写真
●交際の経緯を詳細に記載した申請理由書
これらの資料を提出し、正真正銘の結婚であることを申請者自らが書面で立証していく必要があるのです。
その様に感じてしまうのは仕方ないと思います。
偽装結婚が横行することによる配偶者ビザ審査の厳格化によって、割を食わされているのは善良な国際カップルです。
偽装結婚はバレると高く付く
多くの偽装結婚はバレます。
どのようにバレるのかというと、
●出入国在留管理庁の実態調査部門の調査
●警察の捜査
●近隣住民からの告発
●身近な人間からの密告
などが挙げられます。
特に、入管の実態捜査部門や警察の捜査能力は非常に高いですので、軽い気持ちで偽装結婚をすると直ぐにバレてしまいます。
そして、偽装結婚はバレると大きい代償を払うことになります。
まず、偽装結婚で配偶者ビザを入手した場合、在留資格取り消しの対象となります。
在留資格取消制度(入管法22の4条1項1号~4号)
「在留資格を持って在留する外国人が、虚偽の申し立て、不利益事実の秘匿、偽造文書の提出等の不正手段により上陸許可の証印等を受け、在留資格を付与されている事実が判明した場合」
法務大臣は外国人の在留資格を取り消すことができます。
そして、上記の理由で在留資格を取り消された場合は退去強制事由にも該当するため、退去強制もされることになります。
退去強制をされた場合は5年間日本に再入国することができなくなります。
これで終わりではありません。
偽装結婚が発覚すると、以下の罪に問われる恐れがあります。
偽装結婚と刑事罰
●公正証書原本不実記載罪(刑法157条1項)
五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金
●在留資格不正取得罪(入管法70条1項)
三年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三百万円以下の罰金
ここで懲役1年を超える刑を受けた場合も、退去強制事由に該当する事になり、日本に5年間再入国ができなくなります。
偽装結婚が発覚することにより、現在の在留資格はもちろん、将来の可能性までも奪われます。
偽装結婚。バレると痛いです。
配偶者ビザの申請時に偽装結婚が疑われやすい事例
ここで、配偶者ビザの申請時に偽装結婚を疑われてしまいやすい事例の一部を紹介します。
これらの事例に該当する人は、申請前にそれなりの準備が必要です。
夫婦間に年齢差がある
年齢差の大きい夫婦の場合、配偶者ビザの審査が厳しくなります。
過去の偽装結婚の事例では夫婦の年齢差が大きいものが多く、出入国在留管理庁は年齢差の大きい夫婦に対しては警戒を強めているのが現状です。
15歳以上離れているとなると審査が不利になると思っておいた方が良いです。
年の差がある場合の申請の対策等については、以下の記事で詳しく解説しています。
夫婦どちらか、または両方に離婚歴が複数ある
離婚歴が多い場合は、婚姻関係の信憑性を疑われることなります。
実際に、ビザとお金を引き換えに結婚し、発覚しそうになると離婚というサイクルを繰返す悪質なケースがあるのです。
離婚を2回以上していると審査が厳しくなり、回数を重ねるごとに難易度は上がります。
離婚歴がある場合の申請の対策については、以下の記事で解説しています。
夫婦が別居をしている場合
入管は夫婦の同居の有無を一つの基準として、婚姻関係の実体があるかどうかを判断しています。
特別な理由がないにも関わらず夫婦が別居している場合、
婚姻関係の実態が無い=偽装結婚
というように認識されてしまう恐れがあります(夫婦の同居の有無に関して問題となるのは主に更新申請、変更申請の際です)。
別居中の配偶者ビザ申請については、以下の記事で詳しく解説してます。
相手の言語が分からない等、コミュニケーションに問題がある場合
普段コミュニケーションを取る際に使用する言語については、配偶者ビザ申請に必須な書類である「質問書」で記載する欄があります。
コミュニケーションが翻訳アプリを使わないとままならないのにも関わらず結婚したとなると、偽装結婚を疑われます。
お互いの言葉もよく分からない同士で結婚しても破綻が目に見えていますし、通常はあり得ないと思われるでしょう。
短期間の交際で結婚に至っている場合
短期間で結婚をするいわゆる”スピード婚”の例は巷であふれています。
しかし、配偶者ビザの審査という観点からは、スピード婚はマイナス要因としてカウントされてしまう恐れがあります。
日本人同士であったとしても交際期間が短い場合は周囲から心配されることが多いと思います。
これが国際結婚の場合はなおさらで、偽装結婚の疑いを深めてしまいます。
本当の偽装結婚は交際期間など必要としないため、交際期間が短いと偽装結婚の疑義が生じてしまうのです。
短期間で結婚に至っている場合、以下のような対策を講じて配偶者ビザの申請に臨みます。
●申請理由書で二人が結婚に至った経緯を詳細に説明する
●交際を裏付けるスナップ写真を20枚以上提出する
●交際を裏付ける通信履歴を提出する
偽装結婚を疑われ、許可リスクが高まってしまう事例は他にもありますので、もっと知りたい方はこちらの記事をどうぞ。
まとめ
本記事では配偶者ビザと偽装結婚について解説してきました。
残念ながら、現在も配偶者ビザ目的の偽装結婚は後を絶ちません。
偽装結婚などと関わらないようにすることはもちろんですが、偽装結婚とあらぬ疑いをかけられぬよう、慎重にビザ申請をしていくことも大切です。
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