国際結婚の手続きは一律に決められているものではなく、相手方の国籍によってその方法や必要書類等は異なってきます。
この記事では中国人との国際結婚にフォーカスを当てました。
それぞれの国の婚姻に関する法律の違いから、国際結婚の手続き方法まで、初めての方にもわかりやすいよう解説していきます。
・日本と中国の婚姻に関する法律の違い
・中国人との国際結婚の手続きの全体像と各詳細
・国際結婚後、中国人パートナーと日本に住むための手続き
行政書士 明石隆生
ビザ部を運営する編集長、現役行政書士。 行政書士事務所の代表として日々多く業務をこなしながら、専門家としての知識を活かし、日本のビザに関する様々なお役立ち情報を発信している。ビザ関係の記事はすべて自ら執筆。
目次
中国人と日本人の国際結婚
近年のグローバル化も相まって、日本人と外国人の国際結婚は年々増えています。
特にその中でも中国人と日本人のカップルは、国際結婚組み合わせの中でも男女ともにトップクラスです。
<日本人男性と結婚した外国人女性(2020年度)>
順位 | 国籍 | 人数 |
1位 | 中国 | 542人 |
2位 | フィリピン | 508人 |
3位 | ブラジル | 483人 |
<日本人女性と結婚した外国人男性(2020年度)>
順位 | 国籍 | 人数 |
1位 | アメリカ | 562人 |
2位 | ブラジル | 511人 |
3位 | 中国 | 494人 |
このデータは2020年度のデータなので、パンデミックもあり国際結婚の人数は例年より減少した年ではありますが、中国人との国際結婚数は男女ともに多いです。
ちなみに前年の2019年度は中国人の男女共に最多となっています。
このように、地理的にも文化的にも近い中国人との国際結婚は現在も人気です。
日本と中国の婚姻に関する法律の違い
当然ながら婚姻に関する法律はそれぞれの国で異なります。
日本と中国の法律も様々な点で異なりますが、注目すべき点としては婚姻適齢(婚姻が可能になる年齢)の違いが挙げられます。
このように、結婚が認められる年齢一つとっても、それぞれの国で法律が異なります。
各国で法律が違う場合、どちらの国の法律の要件を満たせばよいのか
※ここは少々面倒なので、早く先に進みたい方は読み飛ばしてもらってOKです。
上で述べたような、それぞれの国で婚姻適齢が異なる場合はどのように処理するのでしょうか。
結論、日本人に関しては日本の民法で決められた要件を満たす必要があり、中国人に関しては中国の法律で決められた要件を満たす必要があります。
このように、基本的には各当事者はそれぞれの国の法律の要件を満たす必要があるのです。
基本的な国際結婚の場合は上記の考え方でOKです。
しかし、ここからさらに話がややこしくなるのですが・・・。
中国は別途法律で、
「中国人が外国人と外国で結婚する場合、結婚手続きをした場所の法律に従ってください」
という旨を定めているのです(中国民法通則第147条)。
従って、先に結婚手続きをした場所が日本であれば、日本の法律が適用され、中国人も男18歳、女16歳でも結婚することが可能となります。
※なお、中国で先に結婚手続きをした場合、中国の法律に従う必要があるため、通常通り、男22歳、女20歳以上である必要があります。
ここはややこしい部分でもあるので、こういう違いがあるんだなと思ってスルーしてもらえればOKです。
中国人との国際結婚手続きの流れ
国際結婚はほとんどの方が経験ないと思うので、何から始めればよいか検討もつかないと思います。
以下、国際結婚手続きから日本で夫婦生活することができるようになるまでの全体的な流れです。
①どちらの国で先に結婚手続きをするか決める
②日本(または中国)で結婚手続きをする
③結婚手続きを済ませていない国へ報告的届出をする
④-1.日本の出入国管理局へ在留資格認定証明書交付申請
or
④-2.中長期の在留資格を持って既に日本に在留している場合は在留資格変更申請→「日本人の配偶者等」の在留カード取得
⑤在留資格認定証明書と必要書類を持って在中国日本大使館・領事館へ査証申請
⑥査証を持って日本来日、日本生活スタート
日本で暮らすためには国際結婚手続きと在留資格申請の2つの手続きが必要
勘違いしている人が多いですが、国際結婚手続きが完了したからといって日本で暮らせるわけでありません。
国際結婚手続きが完了した後、出入国在留管理局へ在留資格(配偶者ビザ)の申請を行い、在留資格を得て初めて日本で暮らすことができます。
配偶者ビザについての概要を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
まずはどちらの国で結婚手続きをするか決める
どちらの国で先に結婚手続きを行うかによって、そろえる資料や申請方法も異なってきます。
また場合によっては、後に控える配偶者ビザの申請にも影響することもあります。
従って、それぞれの手順を確認したうえで、どちらの国で先に結婚手続きを進めるのがお互いにとって一番スムーズかを話し合い、結婚手続きをする場所を決めましょう。
以下の章では、それぞれの国で結婚手続きをした場合について詳しくみていきます。
国際結婚手続きでよく出る用語
国際結婚手続きを説明するにあたって、頻出する用語を3つだけ紹介させてください。
国際結婚手続きー日本で先に手続きする場合
日本で先に婚姻手続きをする場合、以下のような流れになります。
①中国大使館または領事館で婚姻要件具備証明書を取得
②日本の市町村役場へ婚姻届けを提出
③市町村役場で「婚姻受理証明書」を取得
④外務証と中国大使館・領事館で「婚姻受理証明書」を認証してもらい、中国人配偶者の戸籍所在地の派出所に提出
以下それぞれ詳しく解説します。
①中国大使館または領事館で婚姻要件具備証明書を取得
中国大使館または領事館で、婚姻要件具備証明書を発行してもらいます。
以下、婚姻要件具備証明書を取得する際に必要な書類です。
注意点
中国人の方が短期滞在で日本にきている場合、中国大使館は婚姻要件具備証明書を発行しないようです。
その場合、
・出生公証書
・国籍公証書
・未婚公証書
を取得し、それぞれ日本語訳を添付して日本の市町村役場へ提出すれば、そのまま婚姻届けを受け付ける役所もあるようです。
現在中国人の方が短期滞在でいる場合、一度事前に各役所に電話で確認をした方がよいでしょう。
②日本の市町村役場へ婚姻届けを提出
中国大使館または領事館で婚姻要件具備証明書を取得したら、日本の役所へ婚姻届けを提出しに行きます。
以下、必要書類になります。
③市町村役場で婚姻受理証明書を取得
後ほど婚姻届受理証明書は使いますので、婚姻届けを提出した役所で取得しておきましょう。
④婚姻受理証明書を各役所で認証後、中国の役所へ提出する
中国人と国際結婚し、日本で先に婚姻手続きをした場合は、それは中国国内でも有効な婚姻と認められます。
従って、中国国内で改めて婚姻登記をする必要はありません(中国では婚姻登記をし、婚姻証を取得して初めて婚姻の効力が生まれることになります)。
しかし、民居戸口簿(住民票のようなもの)の婚姻状況欄を「既婚」にする必要はあるようです。
この婚姻状況欄を「既婚」にするために、婚姻受理証明書が必要になります。
婚姻受理証明書を日本の市町村役場から取得した後、
婚姻受理証明書を外務省で認証
↓
中国大使館または領事館でも認証
↓
認証してもらった婚姻受理証明書を、中国人の方の戸籍所在地の派出所へ提出
という流れで、民居戸口簿の婚姻状況欄を既婚にします。
国際結婚手続きー中国で先に手続きする場合
中国で先に婚姻手続きをする場合、以下のような流れになります。
①日本の法務局で婚姻要件具備証明書を取得し、それを外務省で認証してもらう(すでに中国にいる場合は在中国日本領事館などで取得)
②中国の管轄の「婚姻登記処」等の婚姻登記機関で婚姻登記申請を行う
③在中国日本領事館、または帰国後に市区町村役場へ報告的届出
以下それぞれ詳しく解説します。
①法務局で婚姻要件具備証明書を取得し認証してもらう
まずは日本の法務局で、婚姻要件具備証明書を発行してもらいましょう。
その後外務省にいき、その書類を認証してもらいます。
なお、すでに中国に滞在しているという方は、現地の日本領事館で婚姻要件具備証明書を取得できます。領事館で取得する場合は、外務省の認証は必要ありません。
婚姻要件具備証明書の有効期間は6か月で、中国の役所へ提出する際は中国語の翻訳文が必要です。
以下、証明書を請求する際の必要書類です。
②中国の管轄の「婚姻登記処」等の婚姻登記機関で婚姻登記申請を行う
婚姻登記を行う場所は、中国人の常住居戸口簿所在地の省、自治区、直轄市が指定する婚姻登記処などの、婚姻登記申請期間に申請を行います。
日本人と中国人のカップルがそろって書類を持参し、申請します。
申請後、結婚証を取得できます。
③在中国日本領事館、または帰国後に市区町村役場へ報告的届出
婚姻登記処で結婚証を取得したら、3月以内に最寄りの在中国日本大使館へ報告的届出を行います。
以下、その際の必要書類です。
また、日本領事館に提出するのではなく、帰国後に住民登録のある市区町村役場に報告的届出をする場合は、3月以内に必要書類を提出しましょう。
その場合の必要書類は、あらかじめ提出する役所へ確認したほうが良いです。
結婚手続き後は在留資格の申請をしよう
結婚手続きを済ませただけでは日本に適法に在留することはできません。
結婚手続き後は、出入国在留管理局(入管)へ在留資格の申請をして、在留資格を取得して初めて日本に適法に在留することができます。
ここでは、中国人の方が現在中国にいる場合と、既に何らかの在留資格を持って日本に在留している場合に分けて、申請手続きの概要を解説していきます。
中国人の配偶者が現在中国にいる場合
この場合、日本人配偶者の方が中国人の方の代理で、入管へ在留資格認定証明書交付申請をする必要があります。
申請方法に関しては、当サイトの記事でわかりやすく解説してありますので、自力でやる場合はぜひ参考にしてみてください。
認定申請の必要書類↓
在留資格認定証明書交付申請の書き方↓
質問書の書き方↓
身許保証書の書き方↓
在留資格認定証明書を取得したら日本領事館へ査証を申請する
在留資格認定証明書を取得したら、それを在中国日本領事館へ持参して、査証申請を行います。
なお、在留資格認定証明書の有効期限は発行から3か月なので、期限が切れる前に査証申請をしましょう。※コロナの影響で有効期限が異なる場合があるので要確認
そこで査証が下りれば、パスポートと査証を持っていよいよ来日です✈
以下、査証申請の必要書類になります。
査証申請について、詳しくは在中国日本大使館のサイトをご覧ください。
中国人の配偶者が既に日本に在留している場合
中国人の方が、既に中長期の在留資格を持って日本に在留している場合は、婚姻手続き後に入管へ在留資格変更許可申請を行います。
変更申請方法に関しては、当サイトの記事でわかりやすく解説してありますので、自力でやる場合はぜひ参考にしてみてください。
在留資格変更申請完全ガイド↓
在留資格変更許可申請書の書き方↓
変更申請の場合、新しい在留カードを取得すれば手続きは完了です。
まとめ
今回は中国人の方と国際結婚する場合の情報をまとめてみましたが、参考になりましたでしょうか。
国際結婚はいざするとなると、やらなければならない手続きが多く色々面倒くさいです。
もし面倒な手続きを丸投げしたいという方は、国際結婚に詳しい行政書士へ頼んでみてもいいかもしれません。
相談は無料なので、下のリンクからお気軽にどうぞ!