外国人が日本で就労することができる、いわゆる就労ビザには種類が様々ありますが、今回の記事ではその中でも「技能ビザ」について詳しく解説していきます。
この記事は、外国人のビザに詳しい行政書士が執筆しています。
- 技能ビザとはどのようなビザなのか
- 技能ビザで働ける職種
- 技能ビザ申請のポイント
- 技能ビザの申請の流れ・必要書類
目次
技能ビザとは
外国人が日本で働くには、日本で就労可能な在留資格を取得する必要があります。
「技能ビザ」とは、就労可能な在留資格の一つである「技能」のことを指します。
技能ビザとは通称ですが、わかりやすいように本記事でも「技能ビザ」と呼びます(在留資格とビザの違いについて、詳しくはこちらを参考にしてください)。
技能ビザは、熟練技能労働者を外国から受け入れるために設けられた在留資格です。
技能ビザでは、ただ単に労働者の技能が熟練しているだけでなく、その業務内容が、産業上の特殊な分野に属している必要があります。
例えば、単にレジ打ちに熟練している、ベテランコンビニ店員は技能ビザの許可はおりません。
産業上の特殊な分野に属する熟練労働者とは、例えば経験を積んだベテランインド料理人やワインソムリエなどが該当します。
産業上の特殊な分野について
ここで、「産業上の特殊な分野」について簡単に説明します。
産業上の特殊な分野とは、外国特有であり、外国の技能のレベルが日本のそれより高い産業分野が考えられます。
上の例を出すと、熟練したインド料理人は産業上の特殊な分野に属する業務として考えられます。
インド料理は言うまでもなくインドが起源であり、インド特有であるといえるからです。
一方、外国人寿司職人は、外国特有な特殊な産業分野であると認められないため、技能ビザが下りることはありません。
寿司は外国特有のものではないからです。
技能ビザについては基準省令というもので、産業上の特殊な分野に関する職種が1~9号まで列挙されています。
したがって、たとえ産業上の特殊な分野といえそうな職種であっても、基準省令のなかの1~9号の中に含まれていなければ、技能ビザに該当することはありません。
技能ビザの職種一覧
以下は基準省令で列挙されている、技能ビザの職種一覧です。
以下では、職種の中でも代表的なものをいくつか抜粋して簡単に解説していきます。
調理師(1号)
調理、食品の製造にかかる産業の特殊な分野に該当する、熟練した技能を有する外国人の規定です。
中華料理、フランス料理、インド料理のコックやパティシエなどが該当します。
建築技術者(2号)
外国特有の建築や土木にかかる技能は、ゴシック、ロマネスク、バロック方式や、中国式の建築・土木などに関する技能をいいます。
外国特有製品の製造・修理(3号)
ヨーロッパ特有のガラス製品や、イランのペルシャ絨毯などの外国特有の製品の製造・修理にかかる技能が該当します。
スポーツ指導者(8号)
一般的にスポーツは「競技スポーツ」と「生涯スポーツ」に分けられますが、技能ビザにおけるスポーツでは両者が該当します。
なお、野球やサッカーのプロチームの監督やコーチ等は、技能ビザではなく「興行」という在留資格になります。
ヨガの講師や整体師はスポーツ指導者に該当しません。
技能ビザの申請のポイント
技能ビザの申請には3つのポイントがあります。
- 実務経験年数について
- 報酬額・給料について
- 業務内容について
それぞれ解説します。
実務経験年数について
技能ビザに該当するそれぞれの職種について、それぞれ必要な実務経験年数が定められています。
以下の画像をご覧ください。
※外国の教育機関で、該当する技能に係る科目を専攻した期間は、実務経験年数に含まれます。
職種ごとに必要な実務経験年数は異なりますが、一般的に技能ビザの取得には長い実務経験が必要になります。
そして技能ビザを申請する上では、外国(母国)での実務経験を在職証明書等で証明しなければなりません。
実務経験の裏付けの書類が取れない場合、許可を取ることができません。
調理師などは10年の実務経験が必要なので、10年分の裏付けをとるのは大変かもしれませんが、ここが技能ビザの可否を決めるキーポイントになります。
報酬額・給料について
受け入れ先の企業が外国人に支払う給料は、日本人のそれと同額もしくはそれ以上である必要があります。
日本人と外国人が同じ業務に従事しているにもかかわらず、日本人の月額は25万円、外国人の月額は20万円、という不平等は認められないということです。
業種ごとに給与の水準は当然異なりますが、一般的には東京圏で月額が17万円を下回ると許可の可能性が低くなるといわれています。
【事例】
日本で法学を専攻して大学を卒業した外国人が、月額報酬15万円で旅館のフロントでの外国語を用いた対応業務を行うと申請を行ったが、同時期に採用された日本人スタッフの月額報酬が20万円であることが判明し、不許可とされた。
(技術・人文知識・国際業務の不許可事例)
業務内容について
技能ビザを取得する場合、基準省令で1~9号に定められている職種、業務に従事しなければなりません。
例えば気を付けなければならないのは、
「技能ビザを持っている調理師が、店舗の賃貸契約書や営業許可書の名義人となっている」
ような場合です。
この場合技能ビザの申請は不許可となります。
技能ビザでは、経営判断を伴う活動(事業の経営)を行うことは認められていないためです。
技能ビザ申請の流れ
申請までの流れを簡単に理解するために、以下の画像をご覧ください
以下、それぞれ解説していきます。
外国人が技能ビザを取得できる見込みがあるかチェックする
外国人を採用したはいいけど、ビザを取得できなければ元も子もありません。
したがって、まずは採用しようとする外国人が技能ビザを取得できるのかどうかのスクリーニングをする必要があります。
確認する事項としては、
- 現在の在留資格(日本にいる場合)
- 犯罪歴(退去強制歴等)
- 技能の職務にかかる実務経験年数
- 学校の履修科目履歴
などが挙げられます。
雇用予定の外国人が、技能ビザの取得見込みがあることを確認してから先に進みましょう。
内定後に雇用契約書を作成する
外国人の採用を決めたら、雇用契約書を作成します。
雇用契約書は、在留資格申請時に必ず必要となる書類です。
なお、現在就労資格を持っていない外国人の雇用契約書には、
この雇用契約は日本で就労可能な在留資格の許可を条件として効力を有する。
というような一文を加えます(停止条件付雇用契約書)。
必要書類を揃え、出入国在留管理局へ申請する
雇用契約書まで作成できたら、その他の必要書類を書類を揃え、管轄の出入国在留管理局へ申請を行います。
海外から外国人を招へいする場合、「在留資格認定証明書交付申請」を行います。
外国人が「留学」等の在留資格をもってすでに日本に在留している場合、「在留資格変更許可申請」を行います。
自社での申請や、外国人本人が申請をするのが大変の場合、ビザ申請の専門家である行政書士に依頼するのもよいでしょう。
在留資格の取得、就労開始
無事外国人が在留資格を取得できれば、会社の業務に従事することができます。
技能ビザ申請必要書類
技能ビザの申請に必要な書類は、雇用元の企業の規模によって異なります。
上の画像をご覧ください。外国人を雇用する企業の規模によってカテゴリーが分けられます。
4つのカテゴリーを簡単に説明すると、
【カテゴリー1】→上場企業
【カテゴリー2】→非上場の大規模企業
【カテゴリー3】→中小零細企業
【カテゴリー4】→新設会社
となります。
カテゴリー1・2は、企業の規模も大きく、社会的にも信頼性も高い為、必要書類は大幅に削減されます。
一方、カテゴリー3・4に分類される企業は就労ビザ申請にあたって、その適性を立証していく為に多くの書類を提出することになります。
ここでは、多くの企業が該当するカテゴリ3の必要書類を紹介します。
【共通書類】
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 証明写真(縦4cm×横3cm)
- 返信用封筒(404円分の切手を貼付する)
【会社側で用意する書類】
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
- 会社の登記事項証明書(全部事項証明書)
- 定款の写し
- 雇用契約書
- 会社案内(HPなど)
- 直近年度の決算書類の写し(貸借対照表・損益計算書)
- 営業許可証のコピー
- メニューのコピー
- 雇用理由書
- 勤務地の外観、内観の写真(数枚)
【申請者本人側で用意する書類】
- 専門学校等の卒業証明書(ある場合)
- パスポートの写し
- 履歴書
- 在職証明書
- 実務経験を証明できる文書
- 日本語能力試験の合格証の写し(ある場合)
- 各資格試験の合格証の写し(ある場合)
上の必要書類は、調理師の技能ビザを申請する際の一例です。
申請者の状況や職種によって、揃える必要書類は異なってくるので注意してください。
自力での申請が難しい場合専門家へ相談を
今回の記事では就労ビザの一つである技能ビザについて解説してきました。
在留資格の申請は慣れていないと相当な時間がかかるため、自社や本人で対応するのが難しいケースもあると思います。
素早く、効率的に外国人を雇用したい方は、行政書士のようなビザの専門家に外注することも視野に入れると良いでしょう。
ビザ部では、就労ビザに関しての相談は無料で受け付けていますので、まずはお気軽にお問い合わせください!