多くのハードルをクリアしてやっと取得することができる日本の永住権。
しかし、永住権はあくまでも在留資格の一つです。
在留資格は何かあったときに取り消されることがあります。恐ろしいです。
そこでこの記事では、永住権が取り消される理由や実際にあった事例まで、ビザの専門家である行政書士が解説していきます。
・永住権が取り消される理由
・永住権が取り消された事例
・永住権が取り消しにならないケース
目次
永住権は取り消される
上のグラフは、2015年から2020年までの永住権の取消件数の推移です。
直近でデータが出ている2020年では、3人の外国人が永住権を取り消されています。
ただし、取り消されるといっても、2020年6月末時点では永住者の総数は約80万人いますので、取り消される人の割合というのは極めて低いということが言えます。
「永住者」が在留資格である以上、取り消されるリスクがあるのは事実です。
しかし、永住者の総数に対しての取消件数をみてもわかるように、普通に生活していれば永住権の取消しを恐れる必要は無いでしょう。
永住権が取り消されてしまう理由
取消件数は相対的にみて少ないとはいえ、毎年数件あるのは事実です。
ここで永住権が取り消されてしまう理由を見てみましょう。
申請内容に虚偽があった
永住許可申請をする際、申告した内容に虚偽があった場合は永住権を取り消されることがあります。
具体的には
- 虚偽の申し立て
- 不利益な事実を隠すこと
- 偽造文書の提出
などを行ったと認められた場合、在留資格の取消しをされる恐れがあります(法22条の4第1項1号)。
虚偽申請を行ったとして永住権を取り消されたケース①
永住許可申請の時点で日本人と婚姻の実態がなかったにもかかわらず、「日本人の配偶者等」の在留資格所有者として、日本人配偶者と同居している旨を申請書に記載し、永住許可を受けた人が、虚偽の申請を行ったとして永住権を取り消されました。
虚偽の申請を行ったとして永住権を取り消されたケース②
永住許可申請の際に、不法滞在している父親の名前を申請書に記さなかったとして、フィリピン国籍の女の子(当時8歳)の永住権が取り消されました。
この件では、その子の父親と母親は婚姻関係になかったこと、永住者の在留資格取得から6年たった後の取消は不当だとして、国側と裁判で争っています。
引用元:朝日新聞デジタル
再入国許可なしで1年を超えて出国した
日本に在留する外国人が、一時的に日本を出国して、再入国しようとする場合に必要となるのが再入国許可です。
「永住者」の在留資格をもっている外国人も、一時的に出国する場合は再入国許可が必要です。
再入国許可を受けずに出国した場合や、出国先で期限が切れてしまった場合、在留資格は消滅してしまいます。
なお、永住者が出国中に再入国期限が過ぎてしまった場合、「定住者」での上陸特別許可を受けられる可能性があります。
再入国許可については以下の記事で解説しています。
一定の犯罪を犯した、または有罪判決が確定した
例えば外国人を不法就労をさせて摘発された場合や、在留カードの偽造にかかわる犯罪、薬物関係や売春関係で摘発された場合、退去強制(強制退去)事由に該当し、ひいては永住権が取り消されることがあります、
また、1年を超えて禁錮や懲役等の実刑判決があった場合も永住権が取り消されることがあります。
なお、上記のような犯罪を犯して永住権取消(退去強制)となった場合、5年間再入国することができません。
こうなると、現実的に日本の永住権の再取得は相当厳しくなるでしょう。
住所変更の届出をしない、または虚偽の届出をした
住居の変更があった場合、原則14日以内に住居地の最寄の役所へ届出をしなければなりません。
その届出を90日以内に行わない場合、永住権を取り消される恐れがあります。
また、虚偽の住居地を届出た場合も同様です。
いくら永住者の在留資格を持っているからといって、届出義務が免除されるということはありません。
在留カードの更新も忘れずに
永住者も在留カードの更新は必要です。
在留カードは7年に1度、もしくは16歳の誕生日までに更新する必要があります。
更新を忘れた場合は最悪罰則を受ける恐れがあります。
変更を届出られない正当な理由がある場合
例外的に、届出ができない正当な理由がある場合は永住権は取り消されません。
正当な理由とは、
- 勤務していた会社の倒産などで住居を失い、経済苦に陥り新しい住居地が見つかっていない場合
- 配偶者からの暴力を理由として避難している場合
- 住居地を届け出ることによって、生命・身体に危険が及ぶ恐れがある場合
が挙げられます。
また、以下のケースではそもそも在留資格の取消事由に該当しません。
- 転居後の急な海外出張があり、出国中である場合
- 頻繁に出張があり、1回の当たりの日本滞在期間が短い場合など、在留活動の性質上住居地の設定をしていない場合
- 病気などの理由で入院しており、住居地の届出を行うことができない場合
永住権が取り消しにならない事案
「日本人の配偶者と結婚していますが、離婚をした場合永住権は取消になってしまうのでしょうか?」
という質問をたまに受けます。
結論、離婚をしても永住権が取り消しになることはありません。
理由は簡単で、永住権は日本人の配偶者がいることが理由で与えられる在留資格ではないからです。
もしあなたがいわゆる配偶者ビザをもって日本に滞在している場合、離婚は在留資格取り消しのきっかけとなる恐れがあります。
詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
永住権の取り消しに該当してしまった場合
上記で解説した取り消しの理由に該当したからと言って、永住権がすぐに取り消しになるわけではありません。
取消事由に該当した場合、以下のような流れで取り消しに至ります。
流れは紹介しましたが、取り消されるなんてことはあまり考えたくないですよね。
最悪な事態にならないよう、最低限法令を守り生活していきましょう。
まとめ
在留資格の中でも特に安定した地位が保証される永住権ですが、それでも取消しをされてしまうケースがあります。
苦労して取得した永住権なのですから、失ってしまわないよう日々気を付けて生活を送っていきましょう。