今回の記事では、就労ビザの中でも代表的な「技術・人文知識・国際業務」の変更申請に必要な書類にフォーカスを当てます。
ビザに詳しい行政書士が、図も交えてわかりやすく解説していきます。
- 就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)の変更申請の必要書類
- 受入れ先企業のカテゴリーについて
目次
就労ビザの変更の必要書類は受入れ先企業カテゴリーによって異なる
上の画像を見てもわかる通り、外国人を雇用する企業の規模によってカテゴリーが分けられます。
4つのカテゴリーを簡単に説明すると、
【カテゴリー1】→上場企業
【カテゴリー2】→非上場の大規模企業
【カテゴリー3】→中小零細企業
【カテゴリー4】→新設会社
となります。
そして、雇用元企業がどのカテゴリーに属するかによって、就労ビザ申請の必要書類が異なってきます。
カテゴリー1・2は、企業の規模も大きく、社会的にも信頼性も高い為、必要書類は大幅に削減されます。
一方、カテゴリー3・4に分類される企業は就労ビザ申請にあたって、その適性を立証していく為に多くの書類を提出することになります。
外国人を雇用する多くの企業は「カテゴリー3・4」に当たると思いますので、この後説明するカテゴリー3・4の必要書類を把握しておけば間違いないでしょう。
就労ビザの種類と申請の種類によって異なる必要書類
この記事では「就労ビザ」と一口に言っていますが、就労ビザといっても以下のように様々な種類があります。
- 技術・人文知識・国際業務
- 技能
- 企業内転勤
- 法律・会計 etc…
また、申請の種類もそれぞれあります。
- 在留資格認定証明書交付申請(認定申請)
- 在留資格変更許可申請(変更申請)
- 在留資格更新許可申請(更新申請)
それぞれのビザ、申請の種類によって必要な書類は異なってきます。
この記事で解説するのは、
「技術・人文知識・国際業務」の変更申請
の必要書類です。
現在すでになんらかのビザ(家族滞在や留学など)を持って日本に滞在している外国人が、就労先が見つかった機会に「技術・人文知識・国際業務」に変更する場合が該当します。
これだけ抑えれば大丈夫!就労ビザ【技術・人文知識・国際業務】とは
就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)変更のカテゴリー別必要書類
それでは早速カテゴリごとに必要書類を見ていきましょう。
カテゴリー1
以下、カテゴリー1に該当する企業に外国人が就労する場合の必要書類です。
【共通書類】
- 在留資格変更許可申請書
- 証明写真(縦4cm×横3cm)
- パスポート(提示)
- 在留カード(提示)
【会社側で用意する書類】
- 四季報の写し、又は日本の証券取引所に上場していることを証明する文書の写し
【申請者本人側で用意する書類】
- 大学または専門学校等の卒業証明書
揃えるべき書類が1番少ないのがカテゴリー1の企業です。
カテゴリ2
カテゴリー2です。
【共通書類】
- 在留資格変更許可申請書
- 証明写真(縦4cm×横3cm)
- パスポート(提示)
- 在留カード(提示)
【会社側で用意する書類】
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
【申請者本人側で用意する書類】
- 大学または専門学校等の卒業証明書
カテゴリー1と同じく必要書類は少ないですが、四季報写し等の提出がなくなった代わりに「源泉徴収票などの法定調書合計表」が加わりました。
カテゴリ3
多くの企業はこのカテゴリ3に該当します。
【共通書類】
- 在留資格変更許可申請書
- 証明写真(縦4cm×横3cm)
- パスポート(提示)
- 在留カード(提示)
【会社側で用意する書類】
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
- 会社の登記事項証明書(全部事項証明書)
- 定款の写し
- 雇用契約書
- 会社案内(HPなど)
- 直近年度の決算書類の写し(貸借対照表・損益計算書)
- 雇用理由書
- 勤務地の外観、内観の写真(数枚)
【申請者本人側で用意する書類】
- 大学または専門学校等の卒業証明書
- 大学または専門学校等の成績証明書
- 履歴書
- 住民税の課税証明書
- 住民税の納税証明書
- 日本語能力試験の合格証の写し(ある場合)
- 各資格試験の合格証の写し(ある場合)
- 過去の実務経験を示す在籍証明書等(実務経験の要件で申請する場合)
カテゴリ3の必要書類は、カテゴリ1,2と比べてかなり増えました。
なお、上でリストアップした書類はすべて提出必須というわけではありませんが、任意書類も含めて提出したほうがより良い書類をアップしています。
カテゴリ1,2のケースで申請をする場合でも、カテゴリ3の書類で申請をすれば、追加資料の提出要求がくる心配も無いと思います。
カテゴリ4
一番要求される書類が多いのがカテゴリ4となります。
【共通書類】
- 在留資格変更許可申請書
- 証明写真(縦4cm×横3cm)
- パスポート(提示)
- 在留カード(提示)
【会社側で用意する書類】
- 事業計画書
- 会社の登記事項証明書(全部事項証明書)
- 定款の写し
- 雇用契約書
- 会社案内(HPなど)
- 雇用理由書
- 勤務地の外観、内観の写真(数枚)
- 給与支払事務所等の開設届出書の写し (受付印のあるもの)
- 店舗・オフィスの賃貸契約書の写し、または登記事項証明書
- 直近3か月分の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書の写し、または納期の特例を受けている場合は、その承認を受けていることを明らかにする資料
【申請者本人側で用意する書類】
- 大学または専門学校等の卒業証明書
- 大学または専門学校等の成績証明書
- 履歴書
- 住民の野課税証明書
- 住民税の納税証明書
- 日本語能力試験の合格証の写し(ある場合)
- 各資格試験の合格証の写し(ある場合)
- 過去の実務経験を示す在籍証明書等(実務経験の要件で申請する場合)
カテゴリ4の企業は新設会社なので、事業計画書を作成して提出するところが他カテゴリと主に異なる点です。
提出書類も多く、全カテゴリの中で一番手間のかかる申請となります。
就労ビザ(カテゴリ3)の変更に必要な書類をより詳しく解説
カテゴリ3にはほとんどの中小零細企業が該当する為、カテゴリ3の必要書類を抑えることがポイントとなってきます。
そこで、カテゴリ3の必要書類を一つ一つ解説をしていきます。
共通書類
以下、カテゴリ3の共通書類です。
- 在留資格変更許可申請書
- 証明写真(縦4cm×横3cm)
- パスポート
- 在留カード
在留資格変更許可申請書
パスポートや雇用元の企業の情報をもとに、必要事項を記入していきます。
証明写真
変更申請書に貼り付ける証明写真(縦4㎝×横3㎝)を用意します。
証明写真にも以下の条件がありますので、適切なものを貼り付けましょう。
・申請前3か月以内に撮影されたもの
・無背景、無帽なもの
・写真の裏面に申請者の名前を記載したもの
パスポート
パスポートは申請時に窓口で提示する必要があるので、申請時は持参します。
在留カード
在留カードもパスポートと同じく窓口で提示します。忘れずに持参しましょう。
会社側で用意する書類
以下、カテゴリ3で必要な会社側で用意する書類です。
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
- 登記簿謄本(全部事項証明書)
- 定款の写し
- 雇用契約書
- 会社案内(HPなど)
- 直近年度の決算書類の写し(貸借対照表・損益計算書)
- 雇用理由書
- 勤務地の外観、内観の写真(数枚)
前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」とは、職員に1年間支払う給与総額や源泉徴収額、所得控除などの情報が記載された書面です。
前年分の税務署の受付印があるものを写しを提出します。
会社の登記事項証明書(全部事項証明書)
雇用元の企業の登記事項証明書を添付します。
登記事項証明書は法務局で取得可能です。
窓口申請だけでなく、郵送申請やオンライン申請も利用できます。
定款の写し
雇用元企業の定款の写しを添付します。
定款の写しは入管が求めている必須の書類ではありませんが、会社の実態や業務内容をより詳しく立証するため、補足書類として添付します。
雇用契約書
外国人の採用を決めたら、雇用契約書を作成しましょう。
なお雇用契約書には、
この雇用契約は日本で就労可能な在留資格の許可を条件として効力を有する。
というような1文を加えると良いです(停止条件付雇用契約書)。
会社案内
会社案内のパンフレットなどがある場合は添付します。
パンフレットがない場合、会社ホームページを印刷したものを添付しましょう。
なお会社案内には、
- 会社名
- 役員
- 沿革
- 業務内容
- 主要取引先
- 取引実績
が記載されているものが良いです。
直近年度の決算書類の写し
直近年度の貸借対照表、損益計算書などを含んだ決算報告書類です。
雇用理由書
雇用理由書の提出は必須ではありませんが、実務上重要な書類です。
できる限り添付するようにしましょう。
内容としては、
- 雇用元企業の事業内容
- 申請人を採用した経緯
- 申請人の経歴
- 申請人の職務内容
- 申請人の給与
などについて、順序だててできるだけ詳細に記載していきます。
勤務地の内観・外観の写真
外観の写真は主にエントランスや、企業名のあるポストの写真を添付します。
内観についてはオフィスの全体図、申請人のデスク回りの写真を添付すると良いでしょう。
申請者本人側で用意する書類
以下、申請者本人側で用意する書類です。
- 大学または専門学校等の卒業証明書
- 大学または専門学校等の成績証明書
- 履歴書
- 住民税の課税証明書
- 住民税の課税証明書
- 日本語能力試験の合格証の写し(ある場合)
- 各資格試験の合格証の写し(ある場合)
- 過去の実務経験を示す在籍証明書等(実務経験の要件で申請する場合)
大学又は専門学校等の卒業証明書
卒業証明書、または卒業証書の写しを提出します。
なお、卒業証書は卒業式などで1部のみ授与されるのに対し、卒業証明書とは卒業証書とは別に学校から発行される証明書です(複数発行可能)。
大学又は専門学校等の成績証明書
申請人の履修内容と、企業で従事する業務内容に関連性があることを立証する資料として添付します。
履歴書
申請人の学歴や職歴などの経歴を書いた履歴書を添付しましょう。
上図のような簡単なもので構いません。
住民税の課税証明書
住民税の課税証明書とは、住民税の税額を証明するもので、前年1年間の所得額が記載されている書類です。
その年の1月1日までに住んでいた市区町村の役所から発行されるものです。
発行から3か月以内の書類が必要です。
なお、住民税の課税額が「0円」の方は非課税証明書を提出します。
住民税の納税証明書
納税証明書は上述の課税証明書とは異なり、納付すべき住民税の金額や納付済み額、未納額などが記載された書類です。
その年の1月1日までに住んでいた市区町村の役所から発行されます。
なお必要年数分に関しては課税証明書のそれと同じですので、上記を参考にしてください。
日本語能力試験やその他資格試験の合格証の写し
あくまでも任意書類ですが、申請人に少しでも有利に働くような資格試験の合格証は積極的に提出していきましょう。
過去の実務経験を示す在籍証明書等
「技術・人文知識・国際業務」の場合、学歴のハードルをクリアできない場合でも、実務経験が一定数あればビザの取得が可能です。
実務経験を根拠として申請を行う場合、過去の実務経験を証明することができる在籍証明書等の書類を提出します。
変更申請の手数料は4,000円
変更申請については、申請が許可された際に手数料4,000円を支払う必要があります。
4,000円は収入印紙で支払います。
まとめ
この記事では、就労ビザの一つである「技術・人文知識・国際業務」の変更許可申請を行う場合の必要書類を解説していきました。
出入国在留管理庁のHPでも必要最低限な書類は掲載されていますが、在留資格に該当する経歴や業務内容をしっかりと立証するためには、本文で解説したような任意の書類が多く必要となります。
申請に慣れていない企業様にとっては、申請書類の収集と作成はなかなか骨が折れる作業です。
自社ではノウハウがないという場合は、是非一度お気軽にビザ専門の行政書士にお問い合わせください。