「留学」や「家族滞在」など、日本には就労することが認められていないビザ(在留資格)がいくらか存在します。
それら就労不可のビザを持つ外国人が日本で就労しようとする場合、資格外活動許可を取得するか、就労ビザへ変更申請する必要があります。
この記事では、就労ビザへの変更について、就労を希望する外国人や、外国人を雇用する予定の企業が知るべき情報をわかりやすくまとめました。
- 就労ビザへの変更申請の概要
- 変更申請の必要書類
- 就労ビザへ変更する流れ(留学生)
- 変更申請の要件
- 変更申請のご法度
- 許可されたその後について
目次
就労ビザへの変更申請の概要
画像
就労ビザの変更申請は、正式には「在留資格変更許可申請」といいます。
また、就労ビザとは、就労可能な在留資格の通称です。
就労ビザの種類としては、
- 技術・人文知識・国際業務
- 技能
- 企業内転勤
などが挙げられます。
就労ビザ(在留資格)を持つ外国人が、在留の目的を変更する場合に行うのが、在留資格変更許可申請となります。
(例)
「留学」の在留資格で日本の大学に通学する外国人が、日本で就職先が決まり、「技術・人文知識・国際業務」へ変更する場合
入管法では、法務大臣が相当の理由があると認める場合に限り、就労ビザの変更を許可することとされています。
以下の画像では就労ビザの変更申請について概要をまとめました。
各項目を以下で深掘りしていきます。
手続き対象者
今現在なんらかの在留資格をもって日本に在留している外国人で、在留資格の変更を受けようとする人が対象となります。
申請提出先
住居地を管轄する地方出入国在留管理官署が提出窓口となります。
管轄の窓口はこちらから検索できます。
申請できる人
入管の窓口へ変更申請書類の提出ができる人は、
- 申請人
- 代理人(法定代理人)
- 申請取次者(行政書士など)
に限られます。
なお、法定代理人とは申請人本人の親権者などが当たります。
申請の時期
就労ビザの変更の事由が生じた時から変更申請を行うことができます。
雇用契約の始期までの期間がおおむね3月以内であれば申請は受理されます。
また、4月入社の留学生の場合は前年の12月1日から申請は可能とされています。
審査期間
入管は審査期間(標準処理期間)を2週間~1か月程度としています。
しかし申請の時期やケースによっては、それ以上かかってしまうこともあります。
申請手数料
許可が下りる時に4000円必要です。
証紙を購入して納付します。
就労ビザ変更の必要書類
就労ビザの申請に必要な書類は、外国人を雇用する企業や所属機関がどのカテゴリーに属するかによって異なります。
4つのカテゴリーを簡単に説明すると、
【カテゴリー1】→上場企業
【カテゴリー2】→非上場の大規模企業
【カテゴリー3】→中小零細企業
【カテゴリー4】→新設会社
となります。
カテゴリー1の企業に属する場合、比較的必要書類は少なく、カテゴリー4に進むにあたって必要書類が多くなっていきます。
以下、多くの企業が該当するであろう「カテゴリー3」の場合の必要書類を参考までに紹介します。
【共通書類】
- 在留資格変更許可申請書
- 証明写真(縦4cm×横3cm)
- パスポート(提示)
- 在留カード(提示)
【会社側で用意する書類】
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
- 会社の登記事項証明書(全部事項証明書)
- 定款の写し
- 雇用契約書
- 会社案内(HPなど)
- 直近年度の決算書類の写し(貸借対照表・損益計算書)
- 雇用理由書
- 勤務地の外観、内観の写真(数枚)
【申請者本人側で用意する書類】
- 大学または専門学校等の卒業証明書
- 大学または専門学校等の成績証明書
- 履歴書
- 住民税の課税証明書
- 住民税の納税証明書
- 日本語能力試験の合格証の写し(ある場合)
- 各資格試験の合格証の写し(ある場合)
- 過去の実務経験を示す在籍証明書等(実務経験の要件で申請する場合)
就労ビザへの変更の必要書類は以下の記事で詳しく解説しています。
就労ビザへの変更フロー(留学生の場合)
ここではよくあるケースでもある、外国人留学生が留学ビザから就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)へ変更する場合を想定したフローを紹介します。
- 就職活動・内定
- 雇用契約書作成
- 変更申請の必要書類を準備する
- 住居地を管轄する出入国在留管理官署(入管)へ申請する
- 入管から通知書が送られてくる
1.就職活動・内定
就労ビザへの変更は、就職予定先の企業から内定をもらってから行います。
したがって、まず留学生は就職活動を行い、企業から内定を取り付けることが先決となります。
先に就労ビザの変更申請をしても、内定が下りていないと不許可になってしまいます。
2.雇用契約書作成
企業は、外国人の採用を決めたら雇用契約書を作成します。
この雇用契約書は、就労ビザの変更申請時に添付するので必ず必要になってきます。
なお、書面には以下のような1文を加えましょう。
この雇用契約は日本で就労可能な在留資格の許可を条件として効力を有する。
この様な文が入った書面を「停止条件付雇用契約書」と呼びます。
3.変更申請の必要書類を準備する
雇用契約書の作成完了後、もしくは並行して就労ビザへの変更申請に必要な書類の収集、作成を行います。
変更申請では収集する書類も多くなるため、ここが大きなウエイトを占めます。
4.住居地を管轄する地方出入国管理官署へ申請する
書類が揃ったら、管轄の入管局へ申請を行います。
4月入社が決まっている留学生については、前年の12月1日から申請が可能という事は前述しました。
5.入管から通知書が送られてくる
審査が完了すると、入管よりハガキの通知書が送られてきます。
通知書が来たら、
- 通知書
- パスポート
- 在留カード
- 手数料(4000円分の印紙)
などを持参して、期限日までに入管の窓口へ出向きましょう。
許可の場合新しい在留カードがもらえます。
新しい在留カードをゲットして初めて、就職先での就労活動が可能となります。
※留学生が就労ビザへ変更する際の注意点
4月時点で就労ビザが下りていない場合、入社式への参加などは可能ですが、ビザが下りるまで実際に働くことはできません。
また、就職が決まらず卒業後も就活を続ける場合は、留学から「特定活動」という在留資格に変更する必要があります
就労ビザへの変更の要件
就労ビザへの変更は、「法務大臣が適当と認める相当の理由があるときに許可する」とされています。
この判断は、外国人が日本で行っている活動や在留状況などから導かれるのですが、具体的には外国人が以下の要件を満たすかどうかが重要になってきます。
- 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
- 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること
- 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
- 素行が不良でないこと
- 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
- 雇用・労働条件が適正であること
- 納税義務を履行していること
- 入管法に定める届出等の義務を履行していること
1.行おうとする活動が申請にかかる入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
要するに、在留資格の内容と、外国人が日本で行っている活動(仕事)が法律的にマッチしている必要があるということです。
2.法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること
現在の在留資格から就労可能な在留資格へ変更するためには、「上陸許可基準」を満たしている必要があります。
上陸許可基準は在留資格の種類によって異なりますが、たとえば学歴や実務経験などの要件があります。
就労ビザ(主に技術・人文知識・国際業務)の具体的な要件に関しては、以下の記事を参考にしてください。
これだけ抑えればOK!就労ビザ【技術・人文知識・国際業務】とは
3.現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
外国人は、現に有する就労ビザ(在留資格)に応じた活動を安定的かつ継続的に行う必要があります。
例えば留学生の場合、学校の欠席率などから在留状況を審査され、その結果が変更の許否に影響することがあります。
4.素行が不良でないこと
就労ビザの更新は、外国人の素行が良好ということが前提となっているので、素行が悪い場合はマイナス評価となってしまいます。
素行が悪いとは、
- 日本の法令に違反して罰金刑以上の刑に処される
- 違法行為や風紀を乱す行為を繰り返し行う
- 不法就労などの斡旋を行う
などが該当します。
例えば留学生が、資格外活動許可を得ずにアルバイトをしている場合や、風俗営業をしているお店で働いていた場合、素行不良とみなされ、変更申請が不許可になることがあります。
5.独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
外国人の生活状況として公共の負担(生活保護等)となっておらず、持っている資産や収入などから見て将来的に安定した生活が見込まれることが求められます。
6.雇用・労働条件が適正であること
外国人の就労先の労働条件が、労働基準法や最低賃金法などの労働関係法令に適合している必要があります。
7.納税義務を履行していること
日本に中長期している外国人であっても、納税義務については日本人と相違はありません。
納税をしていない場合や滞納している場合、更新の審査の際にマイナス要素として勘案されてしまいます。
8.入管法に定める届出等の義務を履行していること
中長期の就労ビザを持っている外国人は、住所などに変更があった場合はその都度しかるべき届出をする必要があります。
届出をうっかり忘れていたからといって一発不許可になることはあまり無いようですが、審査のマイナス要素になることは間違いありません。
以下、各種届出です。
- 住居地変更届出
- 所属機関に関する届出
- 在留カードの記載事項に係る届出
- 在留カードの有効期間更新申請
- 紛失などによる在留カードの再交付申請
- etc・・・
就労ビザへの変更申請で気を付けるポイント
就労ビザへの変更申請で気を付けるポイントとしては、
- 虚偽申請
- 変更申請をせずに放置すること
の2点があります。
虚偽申請
就労ビザの変更に当たって、不利な事情があるからと嘘を書面に書いたり、書類を偽造したりすることは絶対にやってはいけません。
たとえば留学生の場合、成績証明書や出席簿の偽造などです。
入管は虚偽申請を一番嫌うので、仮に外国人が変更の条件を満たしていたとしても、一つの虚偽が発覚した場合一発で不許可にされます。
また、虚偽申請をした事実は入管のデータベースに残り、今後の申請においても共有され続けるので、一度の虚偽申請が命取りになり得ます。
さらに、万が一虚偽などの不正手段で変更許可が下りた場合、在留資格等不正取得罪も成立します。
虚偽申請は百害あって一利なしです。
変更申請に不利な事情がある場合は、嘘をつくのではなく、行政書士等の専門家に相談するのが一番です。
変更申請をせずに放置すること
変更申請をせずに放置すると、以下の問題があります。
- 専従(非専従)資格外活動罪に該当する
- 在留資格取消事由に該当する
専従(非専従)資格外活動罪に該当する
たとえば、「技能」の在留資格をもつコックさんが、不動産会社の営業に転職したにもかかわらず、変更申請を行わないケースが問題となります。
「技能」で認められた活動以外の就労を専ら行っていると明らかに認められる場合、専従資格外活動罪として刑罰規定が適用されます。
専らに行っていると明らかに認められない場合でも、非専従資格活動罪に該当します。
専従資格活動罪は3年以下の懲役、非専従資格活動罪は1年以下の懲役です。
在留資格取消に該当する
変更申請を行わず、現在もっている在留資格に対応する活動を一定期間行っていないことが判明した場合、在留資格が取り消されることがあります。
在留資格取消制度については以下の記事で詳しく解説してます。
就労ビザへの変更が不許可になったら
万が一就労ビザへの変更申請が不許可になった場合、その後の動きとして以下のパターンが考えられます。
- 在留期限が残されている場合は再申請を行う
- 一度帰国して「在留資格認定証明書交付申請」を行う
在留期限が残されている場合は再申請を行う
不許可の理由にもよるのですが、就労ビザへの変更申請が不許可になった場合でも、在留期限がまだ残されている場合は再申請にチャレンジすることができます。
例えば、就労ビザと申請者の業務内容が合致しないという理由で不許可になった場合、ビザの要件に合致する別の業務内容に従事するとして再申請を行います。
また、就労ビザが下りるような就労先へ再度探して、再申請を行うという事も考えられます。
いずれにしても、再申請までの時間が残されていることが必要です。
一度帰国して「在留資格認定証明書交付申請」を行う
不許可が発覚した時点で、在留期限が残されていない場合や、在留状況不良として変更申請が不許可となった場合は一度出国します。
そして改めて、在留資格認定証明書交付申請を行い、外国から申請人を呼びよせます。
不許可になった場合でも、一度出国して再度認定申請を行うことによって、許可されるパターンも多くあります。
まとめ
就労ビザへの変更申請は更新と違い、海外から外国人を呼び寄せる時と同じような申請手続きを踏んでいきます。
集める書類も多く、変更許可の妥当性を書面で入管へ立証するのは多くの労力が伴います。
ビザ部の記事で申請方法を一から調べれば、自力でも申請は可能ですが、行政書士というビザの専門家に外注するのも一つの手です👍