日本で永住権を取得する為にはどうしたらよいのか?
永住許可申請をするための条件や必要書類は?
この記事では、ビザの専門家である行政書士が永住許可申請について知るべき情報をすべてまとめました。
各章ごとにリンクを貼ってありますので、それぞれ詳細を知りたい場合はリンク先の記事をご覧ください。
- 永住許可申請とは何か
- 永住許可申請~許可までの流れ
- 永住許可申請のメリット
- 永住許可申請の必要書類
- 在留資格別の永住申請の方法
- 永住許可を取得した後に知っておきたいこと
永住許可申請とは
永住許可申請とは、日本の永住権を取得をするために行う申請です。
日本の永住権とは、正確にいうと「永住者」という在留資格のことを指します。
永住許可申請ができるのは、現に在留資格をもって日本に滞在している外国人のみであり、外国からいきなり日本の永住許可申請をすることはできません。
法務大臣から永住許可を受けた外国人は、「永住者」の在留資格で日本に在留することになります。
永住者は日本での就労や在留期限に制限はなく、日本においての地位もより安定的になるので、外国人が永住権を取得するメリットは大きいです。
永住許可申請の概要
永住許可申請の概要を表でまとめました。
【永住許可申請の概要】
申請者 | 申請人本人、取次者、法定代理人 |
---|---|
申請先 | 住居地を管轄する地方出入国在留管理局 |
申請難易度 | 高 |
審査期間 | 4か月~ |
申請手数料 | 8,000円 (許可時) |
永住許可申請の流れ
上の画像が永住許可申請のおおまかな全体の流れとなります。
申請者について
永住許可申請を申請できるのは、
- 申請者本人
- 法定代理人
- 取次者(行政書士等)
です。
ここでいう法定代理人とは、親権者(申請者が18歳未満の場合)、未成年後見人、成年後見人が該当します。
申請先について
住居地を管轄する地方出入国在留管理官署に申請します。
申請先の管轄が分からない場合は、こちらから確認できます。
審査期間について
永住許可の審査は他の在留資格に比べて厳格化されていることもあり、審査期間もミニマムで4か月~と長いものになります。
以下の記事では少しでも審査期間を短縮できるよう、行政書士の視点からアドバイスを書いています。
【永住許可申請の審査期間】行政書士から期間短縮のためのアドバイス
費用について
永住許可申請の手数料は8000円です。
許可時に収入印紙で納付します。
自力で申請する場合は8000円の手数料のみですが、行政書士のような専門家に申請を依頼する場合は追加で申請代行手数料が発生します。
【永住許可申請の費用】窓口手数料から行政書士の費用まで調べました
永住許可申請の許可率
2019年の永住許可に関するガイドラインの改定から、近年永住許可の審査が厳しくなっています。
直近の2020年のデータだと、永住許可申請の許可率は51.67%でした。
永住権を取得するメリット
外国人が永住権を取得すると、以下のように大きなメリットがあります。
- 在留資格を更新する必要がなくなる
- 就労制限がなくなる
- ステータスの変更に在留資格が左右されない
- 住宅ローンや融資が採択されやすくなる
- 家族も永住権が取得しやすくなる
- 地方公務員になれる(自治体や職務による)
- 万が一の時も在留特別許可が認められやすくなる
このように様々なメリット挙がるので、長期的に日本で生活していきたいと思っているのであれば、迷わず永住権の取得を目指しましょう。
永住許可の条件
永住許可の判断は、法務大臣の自由裁量でなされます。
外国人が永住許可を得るためには、大きく4つの条件をクリアする必要があります。
- 素行が善良であること
- 独立して生計を立てることができる資産や技能があること
- 日本の国益に合うと認められること
- 身元保証人がいること
以下でそれぞれ見ていきます。
素行が善良であること
日本の法令をしっかり守って日常生活を送れていれば問題ありません。
この素行善良要件では大きく2つの要件をクリアする必要があります。
- 日本の法令に違反して、懲役・禁固または罰金に処されたことがないこと
- 日常生活、社会生活において違法行為や風紀を乱す行為を繰り返し行っていないこと
独立して生計を立てられる資産や技能があること
独立生計要件では、日常生活で公共の負担とならず、安定した生活が見込めていることが必要とされます。
国は主に以下のポイントに着目し、独立生計能力の有無を判断しています。
- 安定した職業
- 収入
- 扶養人数
日本の国益に合うと認められること
永住許可されるには、申請者である外国人が日本の利益に合うと認められる必要があります。
国益適合の有無は、以下の5つの条件を満たすかどうかで判断します。
- 必要年数以上継続して日本に在留していること
- 納税などの公的義務を果たしていること
- 現在持っている在留資格について最長の在留期間があること
- 公衆衛生上の観点から有害となる恐れがないこと
- 著しく公益を害する行為をする恐れがないと認められること
身元保証人がいること
身元保証人を必ず用意する必要があります。
申請者は、以下の条件に該当する人を身元保証人として選ばなければなりません。
【身元保証人になれる人】
・日本人
・日本の永住権を持っている外国人
【身元保証人に求められること】
・職についていること
・年収300万円以上(が好ましい)
・住民税等の税金を納めていること
※2022年6月より提出書類が緩和されたことにより、上記を証明する書類が提出不要となりました。
身元保証人の保証内容は外国人の法令順守、公的義務を履行するため必要な支援を行うことです。
ここでいう身元保証とは、いわゆる借金の肩代わりをするような連帯保証ではありません。
万が一身元保証をした外国人が法令順守せずに逮捕された場合でも、身元保証人が責任を負うという種のものではないのです。
永住許可の条件については、以下の記事でより詳しくまとめていますので是非ご参考にしてください。
永住許可申請の必要書類
永住許可申請に必要な書類はケース別に出入国在留管理庁のホームページに掲載されています。
しかし、入管のHPに掲載されているのはあくまで申請に最低限必要な書類です。
より永住権の許可率を高めるためには、最低限の書類以外にも、個々の状況に応じた必要書類を作成・収集していく必要があります。
以下は実務上よく提出する必要書類の一覧です。
【自分で作成する書類】
- 永住許可申請書永住許可申請書の書き方
- 申請理由書申請理由書の書き方
- 了解書了解書の書き方
【自分で用意する書類】
- 証明写真
- 在留カード
- パスポート
- 自宅の賃貸契約書のコピー
- 預金残高が確認できるもの
- 健康保険証のコピー
- 住民税を納めていたことが分かる領収書または通帳の写し(住民税を自分で支払っている場合)
- 国民年金保険料の領収書写し(直近2年間に国民年金に加入していた方)
- 国民健康保険の領収書写し(直近2年間に国民健康保険に加入していた方)
- 確定申告書の写し
【各役所で発行してもらう書類】
- 住民票
- 住民税の納税証明書
- 住民税の課税証明書
- 国税の納税証明書
- ねんきん定期便、またはねんきんネットの「各月の年金記録」の印刷画面(厚生年金に加入している方)
- 国民健康保険料納付証明書(国民健康保険に加入している方)
- 法人の登記事項証明書
- 不動産の登記事項証明書(持ち家の場合)
【身元保証人に作成・収集してもらう書類】
- 身元保証書
- 身元保証人の身分証明書写し
申請に必要な書類については以下の記事で詳しく書いています。
【在留資格別】永住許可の申請方法
永住許可申請のわかりずらいところは、今現在有している在留資格によって、永住許可の条件や必要書類が異なってくるところです。
そこで、在留資格別の永住申請の条件や申請方法をそれぞれ解説します。
就労ビザ→永住許可申請
就労ビザとは、以下のような在留資格を持つ人を指します。
- 技術・人文知識・国際業務
- 技能
- 企業内転勤
就労ビザを持つ外国人が永住許可申請をする場合、特別の理由がない限り、許可要件の緩和などはありません。
永住許可申請をするためには、引続き10年以上日本に在留し、このうち就労資格をもって5年以上経過していることが必要です。
経営管理ビザ→永住許可申請
日本で起業している方や、企業で役員をしている外国人が持つビザが「経営管理」です。
経営管理ビザから永住許可申請をする際の条件は、他の就労ビザから永住申請をする際の条件と大きく異なりません。
ただし、経営者ならではの永住許可の必要条件(要件)はありますので注意が必要です。
高度専門職ビザ→永住許可申請
「高度専門職」の在留資格を持つ、いわゆる高度人材外国人は、永住許可の要件が緩和されます。
申請者が有する高度専門職ポイント数によって、緩和の度合いも異なります。
ポイントが70点以上80点未満の外国人は、日本に引続き3年以上在留していると永住申請ができるようになります。
ポイントが80点以上の場合、引続き1年以上の在留で永住権の申請ができるようになります。
配偶者ビザ→永住許可申請
配偶者ビザとは、日本人と結婚して一定の要件を満たすと取得することができる「日本人の配偶者等」という在留資格です。
配偶者ビザを有している外国人も永住許可のハードルが下がります。
実態を伴った婚姻が3年以上継続し、引続き1年以上日本に在留していることで永住許可申請が可能になります。
【配偶者ビザと永住権】その違いから取得方法まで専門家が徹底解説
定住者ビザ→永住許可申請
「定住者」とは特別な理由を考慮して居住が認められる外国人に与えられる在留資格です。
定住者の場合、定住者の在留資格を許可されてから引続き5年以上日本に居住していればよいとされています。
家族滞在ビザ→永住許可申請
家族滞在という在留資格は、扶養能力がある外国人が本体となって、その外国人の扶養家族に与えられるものです。
家族滞在ビザをもって在留している外国人が単独で永住許可申請を行うことはできません。
ただし、家族を扶養している外国人本体が永住許可の条件を満たした場合は、家族滞在ビザを持つその家族は本体者と同時に永住申請をすることができます。
永住許可申請後に知っておきたいこと
当然ですが、永住許可申請をしたからといって必ず許可になるとは限りません。
また永住権を取得できたとしても、日本での生活で注意しなければならないことがあります。
永住許可申請が不許可になったら
2019年に永住許可に関するガイドラインの改定がありました。
ガイドラインの改定から永住許可の審査はより厳しくなったといわれています。
グラフを見ると、2017年あたりから永住申請の許可率は50%台に突入しています。
このように、近年は永住申請をする外国人の約半数が不許可処分とされているのが分かります。
永住申請の許否の判断については法務大臣(国)の裁量が大きいため、一定の条件を満たせば必ず許可がもらえるという性質のものではありません。
これから永住申請する人も、不幸にもすでに不許可になってしまった人も、永住申請が不許可になるケースやその対応策は知っておいた方が良いでしょう。
永住権を取得しても注意すべきこと
あなたが永住権を取得したとしても、日本では在留資格をもって滞在する「外国人」であることに変わりはありません。
日本での生活で引続き注意すべきことを以下にまとめました。
- 出国をするときは再入国許可が必要
- 強制退去(退去強制)のリスクは消えない
- 在留カードは更新の必要がある
- 永住権は取消のリスクもある
出国をするときは再入国許可が必要
たとえ永住者であったとしても、1年以上の長期出国をする場合は再入国許可が必要となります。
万が一再入国許可をとらずに1年以上出国した場合、永住者の在留資格は消滅します。
また再入国許可を取得したとしても、期限内に入国できなかった場合は同じく永住許可は消滅します。
強制退去(退去強制)のリスクは消えない
永住者と言えど、入管法に抵触するような素行を繰り返している場合、退去強制されることがあります。
通常の外国人と比べると永住者は在留特別許可の配慮がされますが、それでも退去強制されることがあるということは覚えておきましょう。
退去強制については入管のページを参考にしてみてください。
在留カードは更新の必要がある
在留資格は更新する必要がありませんが、在留カードは更新する必要があります。
在留カードは7年に1度、もしくは16歳の誕生日までに更新する必要があります。
在留カードの更新は、在留カードの有効期間の2か月前から更新することが可能です。(16歳未満の人は、16歳の誕生日の6か月前から)
期間内に更新を行わなかった場合、1年以下の懲役または20万円以下の罰金に処せられることがあるので注意しましょう。
永住権は取消のリスクがある
「永住者」が在留資格である以上、取り消されるリスクがあるのは事実です。
ただし、その件数は少なく、普通に生活していれば永住権の取消しを恐れる必要は無いでしょう。
以下の記事では取り消しの事例等を詳しく紹介しています。
永住許可申請を行政書士に依頼する
ここまで永住許可申請について解説してきましたが、上の記事をすべて理解した上で自力で申請を行うのはなかなか大変です。
永住許可申請の手続きについては、筆者のような専門の行政書士に依頼が可能です。
申請代行手数料はその分かかってしまいますが、自力でやるより専門家に依頼する方が許可率は上がります。
また、労力とストレスが圧倒的に軽減されるので、日々忙しい方は利用を検討するのも一つの手でしょう。
以下の記事では、行政書士に永住申請に依頼するメリットや、事務所選びのコツまで解説しています。
永住申請を行政書士に依頼するメリットは?事務所選びのコツも解説
もちろん、ビザ部でも行政書士への無料相談を受け付けていますので、お気軽にお問合せ下さい。